【インタビュー前編】

面白さとそれっぽさの兼ね合いと歴史警察対策と。歴史監修はいかに行われているのか

■歴史警察対策最前線――警察に騒がれないために、避けるべきアレとは?

――歴史というと「歴史警察」もうるさいジャンルですよね。

榎本 そうですね。「断定」するような感じになってしまうと歴史警察の方から違うと言われてしまいますので、それは避けるようお話しすることもあります。「〇〇さんが作った鎧」みたいには書かず、この時代風、にとどめるとか。今は本当にネットユーザーの方が詳しい場合もあるので。 

――「歴史警察」は増えてきたのでしょうか。

榎本 もともといましたが、ネットが広がってきて言いやすくなったから目立ってきたというのはあるでしょうね。

――こういった「警察」の重箱の隅をつつくような指摘は、創作者側のやる気を失わせ、ジャンルを滅ぼすともいわれますが。

榎本 うーん、歴史「警察」だと思うからよくないのであって、そういった人たちも「ファン」なんですよね。 あとやっぱり知識のある人だと、自分の方が「上だ」みたいな気持ちが出てくる人もいますから。

 でも、知識欲があること自体はいいことですよね。そして今は実在の刀や軍艦、偉人や文豪などをテーマにしたコンテンツも増え、コンテンツをきっかけにそのテーマそのものに興味を持つ人も増えています。このこと自体はいいことだと思っています。

 ただ、今はネットにより、ユーザーが公式へ意見を言いやすくなりましたから、何か突っ込まれたときに説明はできるようにしましょうとはコンテンツ会社さんにお話はしています。「ここまでは分かる、これ以上はわからない」という線引きを明確にする。それが歴史監修の仕事だと思っています。 全部調べきれるものでもありませんし、そもそも調べようがない、というケースもありますから。

――「調べようがないケース」とはどういう状況でしょうか。

榎本 「日本に現存する日本刀を全て調べたい」みたいなケースですね。ですが、名の知れた名刀を所有はしているものの、保存上などの理由から公開されていないお宅もあるはずですよね。

 さらに「難易度や調査コストとの兼ね合い」も大切です。こちらは数値なども適当な例ですが「刀が光るエピソードを加えても違和感のない、妖刀っぽい逸話を持つ実在する刀を100本調べてほしい」という依頼の場合、そういった刀を80本調べるのは1か月程度でできるものの、それ以降は2ヶ月調査しても1本も出てこないかもしれず、調査費だけがかかってしまう場合は、それでも100本調べますか?と事前にお伝えします。

――フィクションといえども、むやみやたらに刀を光らせたいんじゃなくて「史実的に光る理由のある刀を光らせたい」というニーズがあるんですね。「ミニスカートの女子が関ケ原を駆ける」とか「ジャニーズみたいな髪型の戦国武将」とか好き勝手にやってるように見えて、結構コンテンツ側も「それっぽさ」を考えているんですね。

榎本 特に今は、戦国ゲームが流行っていますから。差別化を図っていかないと苦しいというところで 「それっぽさ」にもこだわられるところが増えたのかなとは思います。

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 後編では引き続き榎本氏より「それっぽく」見せるためのポイントやトリビアをいくつか紹介する。これでもう歴史警察なんて怖くない!

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])


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■株式会社榎本事務所 
http://enomoto-office.com/


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