薔薇族の人びと ~『兵隊画集』は笹岡作治さんの作品だ!

薔薇族の人びと ~『兵隊画集』は笹岡作治さんの作品だ!の画像1兵隊画集/富田晃弘

 ゲイの人は心の中に女性的な部分を多く持っているから、人にほめられると非常にうれしいのだ。逆にけなされると、想像以上に傷ついて落ちこんでしまう。

 これはぼくが載せようと思って載せたものでなく、藤田竜君が載せてしまった。「ホモの敵はホモ」というぐらい、お仲間がお仲間をケなすことが多い。これも心の中の女性的な部分がそうさせるのだろう。

 今でもくやんでも、くやみきれないことだったが、昭和51年3月号に「救いのない笹岡作品、戦前、戦後派に問う」という京都市に住む21歳の原田正也君の投稿を載せてしまったのだ。

 今どきの大学生に、これだけしっかりした理論的な文章は書けはしまい。まさに強力パンチだった。「最近の本誌には、SM傾向が目立ちはじめ伊藤氏の一貫した主張とは、ずいぶん矛盾が目立ち始めたと思われるのは私だけであろうか」と、ぼくにまでとばっちりがきてしまった。

 どれだけこの投書で、笹岡さんの心が傷ついてしまったのか、計りしれないものがある。昭和51年・5月号の『薔薇族』に「私は叱られた」の一文を最後に、笹岡作治さんはぷっつりと筆を絶ってしまった。まだまだ書き残したいものがあったに違いない。本当に読者のためにも、悔いても悔いても、悔みきれない出来ごとになってしまった。

「ああ、M検物語」が載ったころ、主婦と生活社の子会社の「番町書房」(現在はない)発行の富田晃弘著『兵隊画集』(昭和47年発行)があり、著者は福岡県在住とある。ぼくの世田谷学園の大先輩である直木賞作家の伊藤桂一さんが「清心でユニークな兵隊画集」と題して序文を書いておられる。

「この一巻は、富田氏の画集ではあるけれども、同時に富田氏の文学でもある。画に書きそえられた剴切の文章もだが、画――そのものからにじんでくる人間的滋味が、それを見る人の胸に浸透して、文学的に結晶する。戦後30年の一念をこめた所業からくる成果――といえるものではないだろうか」と。

 この画集に登場してくる兵隊たちは、筋肉質というよりも、小太りの兵隊たちだ。これは著者の理想の男性像を描いていると言えないだろうか。もちろん、M検の素裸の兵隊たちの姿も描かれている。それにしても裸の兵隊の姿が目立って多い。

 藤田竜君が「兵隊画集」の書評を誌上に載せた。この書評が良かったのか、書店員が「今まで売れなかったのに、急に売れ出して不思議だ」と言っていたと知らせてくれた読者がいた。藤田竜君、笹岡作品をケなす投稿を載せたのが、これで帳消し。めでたし、めでたし。
(文=伊藤文學)

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