薔薇族の人びと 〜笹岡作治作品がぼくの生き方の大きな力に!

薔薇族の人びと 〜笹岡作治作品がぼくの生き方の大きな力に!の画像1笹岡作治作品より

 笹岡作治さんの作品に登場してくる半タコ(今でいうステテコのようなもの)をはいた魚屋の小僧さんは、ぼくが物心ついた頃には見かけなかった。笹岡さんが幼少時代に見聞きした小僧さんが描かれているのではないか。ぼくが生まれる以前の昭和の初期の時代が笹岡さんの小説の原点になっている。

 大川辰次さん(若者の縛りの絵を描いた男絵師で『薔薇族』だけにイラストを描いてくれた人、笹岡さんと同世代)の若者の縛りの美学を追求したイラストは、まったく独自の発想で描かれた作品で、笹岡さんの小説のための挿絵として描かれたものではない。

 しかし、偶然かも知れないが、実にぴったりと笹岡さんの作品に溶けこんでいて、笹岡さんの作品のために描いたと思うくらいに合っていた。笹岡さんも大川辰次さんのイラストを気に入っていたようで、笹岡さんの作品をひき立てる役割を充分に果していた。

 『ああ、M検物語』への読者の反響はものすごかったが、その後のSM小説の反響も大きく、笹岡作品の世界に引きこまれ、衝撃を受けた読者も多かった。多くの笹岡作品を賛美する読者からの投書が寄せられたが、昭和49年・11月号に「笹岡作治賛歌」の2人の若者の投書が載った。

「あまり手紙を書いたことのない22歳の青年です。私は『薔薇族』にあなたの作品が載っているのを知って読み、すっかりファンになってしまいました。とは言っても、まだ「地獄の顔」「小僧残酷物語」「若者狩り」の3作品しか読んでいないファンですが……。しかし、あなたのいわゆる責め作法には、かなりの迫力とエロチシズムがあり、読む者の興奮をかきたてずにはおられません。
 用語をストレートに表わす文章は歯ぎれがよく、カラリとしていて、とかく責作品に見受けられがちな暗さがまったくありません。そういうところに、私は失礼な言い方ですが、とても好感を持っています」(岡山市・I)

 読者にはマゾッ気の強い人が多いので、笹岡作品の責めの小説のファンになったのだろう。

「期待していた笹岡作治先生の「若者狩り」は、予想以上の素晴らしさに感激しました。小説は作りものだから読まないという読者もいるようですが、何と気の毒な読者でしょう。
 とかく実話、体験記といったものは、野次馬的興味からは面白いかも知れませんが、あくまでもそれは他人に対するノゾキ趣味的なものであり、小説ほどあとあとまで印象に残るものではありません。ぼく個人の好みですが「地獄の顔」「小僧残酷物語」「若者狩り」などは、生涯に残るフィクションの世界の素晴らしさであり、そのフィクションから得た数々の印象が、ぼくのこの社会での生き方に対しての大きな力にもなっています。」(26歳、褌の好きな青年より)

 この投稿を読まれた笹岡さんは、大変喜ばれて、ますます創作意欲をかきたてられたようだ。ゲイの人って、ほめられることが、何よりもうれしいようだ。それはゲイの人に限らないけど。ぼくだって「令和」の考案者、中西進さんに学生時代に短歌の作品をほめられたので、自信をもつことができて、それからのぼくの人生はいい方に変ったのだから。
(文=伊藤文學)

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