好きな作家と好きな監督がタッグを組んだ映画を見に行かないわけにはいかない。そんなわけで今回は、伊坂幸太郎原作・今泉力哉監督の映画『アイネクライネナハトムジーク』をレビューします。
マーケティングリサーチ会社で働く佐藤(三浦春馬)は、劇的な出会いをひたすら待っている。ある日、仙台駅前で街頭アンケートを取っていると、多くの人が立ち止まってくれない中で1人の女性(多部未華子)が快く応じてくれた。佐藤は、親友の「出会いなんてどうだっていい、後で自分の幸運に感謝できるのが一番だ」という言葉を思い出す。
伊坂作品といえば、仙台の駅前からスタートして駅前で終わるこの物語。両親の実家が仙台ということで小さなころから何度も足を運んでいたその景色になつかしさを覚えながら、作品の世界そっと入り込みます。
佐藤と紗季、二人の恋愛が主軸となりますが、出会うのは物語の中盤。二人が出会う前にこの作品の佐藤や紗季の近くの人間たちについて描かれていきます。人のそばには誰かしらがいて、その人にはまた別の人間関係があって、本人たちが知らないどこかでその縁はつながっています。この当たり前だけどスルーされがちな事実がていねいに描かれているのがとてもすばらしかったです。
「出会い」って誰の人生にも必ずあって、いつかどこかで離れてしまう出会いもあります。いつかその出会いの時を振り返って「あの時出会えたのがあの人でよかった」って思えるかどうかが大事なのだと、この物語では繰り返し語られます。
変人だけど憎めない一真、彼とは不釣り合いなほどきれいな由美、その娘の美緒(私と同じ名前だから親近感湧きまくり)と同級生の久留米くん。
みんなどこにでもいそうな、自分の友達や知り合いにいそうなキャラクターばかりだから、それぞれの関係性に知っている顔がよぎる場面も多々あります。自分の生活とどこかつながっていそうな、何気ない関係にこんなに奇跡がつめこまれているのかとハッとさせられます。
佐藤の職場の先輩の藤間役の原田泰造さん。今やっているドラマ「サ道」で毎週裸をみているからかここ最近個人的な好感度が爆上がりしていたのですが、この藤間といううキャラクターもとても素敵でした。
彼は、出会いをとても大事に思っているけれど、それがさみしい方向に向かってしまうという役どころ。だけど「出会ってよかったかどうか」という質問を向けられたときにとても優しい顔をして笑うのです。
この表情がとっても素敵で、このシーンが見れただけでも私はこの映画が見られてよかったなぁって思ってしまいました。原田泰造さんってめちゃくちゃ素敵な表情をされますよね。
もちろん主人公二人の出会いも素敵です。最初の出会いから偶然の再会ののち、大胆に10年の時が流れて、二人の関係を見つめなおす機会が訪れる。
なぜ一緒にいるのか? 10年一緒にいたからその先の10年も一緒にいるとはわからない。その理由を探し悩み惑う二人が出した結論とは?
大事な人と出会ったとき。別れが近づいたとき。関係に疑問を持った時。この映画をまた観たいと思うんじゃないですかね。言葉じゃなくて、「ああそういうことだ」と感じることができるような気がします。自分が置かれている状況によっても見方が変わりそうなので、時間がたったらまた絶対見たい。その時私は誰に共感するのかな。
いま身の回りにいる大切な人との出会い、思い出してみませんか?
(文=華山みお)
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