『高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの』で、絵を描けない高畑の「演出」を見る　膨大な文字資料に圧倒【レポ】

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■やっぱり宮崎駿はすごい！　そして、ハブられる『ルパン三世』

　中編劇場アニメ『パンダコパンダ』コーナーを挟み、『アルプスの少女ハイジ』『母をたずねて三千里』『赤毛のアン』と続きます。

　日本アニメ業界で歴代最強のコンビ、高畑勲×宮崎駿が猛威を振るっていた時期ですね。

　ガッチリと取材を行っただけあって、高畑勲の設定資料はとても緻密で、膨大。セリフ、主題歌の歌詞、物語のキーとなる部分の覚え書き。これらもすごいのですが、とにもかくにも宮崎駿の絵コンテが気持ち悪いぐらい達者なんです。

　サラサラと描いているように見えるのですが、「これ、このまま原画にしてもいいんじゃないの？」というレベルなのです、絵コンテの1コマ1コマが。見ているだけで、キャラクターたちが動いて話しているところが想像できて、とても楽しかったです。

　ちなみに『ホルス』と『パンダコパンダ』の間に、『もーれつア太郎』、『ルパン三世』（テレビアニメ第1シリーズ）も手掛けているはずですが、今回の展示会では触れられていませんでした。権利の問題でしょうか？　しかし、『ルパン三世』は、原作ファンばかりではなく、高畑勲ファンからも評価が高い作品だっただけに残念です。

■近藤喜文、百瀬義行、美術・山本二三、色彩設計・保田道世……ジブリを支えたスターが集結！

　展示会後半は、『火垂るの墓』『おもひでぽろぽろ』『平成狸合戦ぽんぽこ』『ホーホケキョとなりの山田くん』、そして遺作となった『かぐや姫の物語』と、スタジオジブリ作品が続きます。

　やはりTVアニメと比べて、製作資金やスケジュールに余裕があるのでしょう。文字資料も豊富（この時期になっても手書き）ですし、イメージボードも豊富です。

　そう、世界観やキャラクターを掴むために用意されるイメージボードがとにかく多く、そしてそれら1点1点数が、息を飲むほど綺麗なのです。

　特に展示物が多かったのが近藤喜文、百瀬義行、美術・山本二三、色彩設計・保田道世といった、ジブリを支えてきた名クリエーターたちのお仕事は見事の一言に尽きます。

『平成狸合戦ぽんぽこ』に至っては、3×5メートルぐらいの壁一面に、さまざまな狸たちの表情、仕草、動きを捉えたイメージボードが曼荼羅のごとく展示されていて迫力満点です。「こんなに大量の絵を、仕事とはいえ、他人に描かせていいものなのだろうか……」と引いてしまったほど。

　また、『かぐや姫の物語』の複雑な制作過程の説明もされていました。こちらに関しては、テレビのドキュメンタリー番組が放送されたこともありましたし、『高畑勲、『かぐや姫の物語』をつくる。~ジブリ第7スタジオ、933日の伝説~』というBlu-ray、DVDもリリースされていますので、割愛します。

　割愛はしますが、『ホーホケキョとなりの山田くん』の公開から、『かぐや姫の物語』公開まで14年もの時間がありました。当時は「14年も何をやっていたのだろう、冨樫じゃあるまいし」などと考えていたものですが、「これは時間がかかるのも当然だよな」と、うなずいてしまう内容でした。

■1,500円なら安かった『高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの』

『高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの』という展示会タイトルを、最初に目にした時、「『かぐや姫の物語』でこさえた莫大な赤字のことかな？」（総製作費が51.5億、興収は25億）と思ったものですが、『高畑勲展』は見応えがあって、楽しい展示会でした。

「三鷹の森ジブリ美術館」などとは違ってお子さん連れや若い女性の姿はあまり目立たず、比較的年配の方が多くて、静かに回ることができたのも好印象。

　宮崎駿、大塚康生、近藤喜文、百瀬義行といった、日本アニメ界のスターたちの若い頃の仕事を見れましたし、『ルパン三世』その他、見たかった作品の一部がカバーされていない点を除けば満足です。

　展示会は10月6日まで開催しています。お時間がある方は、足を伸ばしてみてください。1,500円以上に楽しめます。
（文／馬場ゆうすけ）

 
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