『高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの』で、絵を描けない高畑の「演出」を見る 膨大な文字資料に圧倒【レポ】

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「東京国立近代美術館」(東京都千代田区)で、7月2日から開催されている『高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの』へ行ってきました。

 意外にも、高畑勲個人にスポットを当てた展示会は今回が初めて。数々の名作はどう作られてきたのか、そして絵を描かない(描けない)アニメ演出家は、どうやって演出を行ってきたのでしょうか(『装甲騎兵ボトムズ』シリーズで知られる高橋良輔監督も、絵を描かないアニメ演出家として有名です)。

 入館料は一般1,500円。常設展(所蔵作品展「MOMATコレクション」)は500円なので、ややお高く感じますが、常設展の入場券ももらえます。さすがに国立は太っ腹です。

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■鬼のように細かくねっちこく、膨大な文字資料

 まず、国内外のアニメーション界の動きを添えた、高畑勲の生誕から死去までの年譜から、展示は始まります。このスペースには、高畑勲と宮崎駿のいい笑顔の2ショット写真が飾られており、ほっこり&しんみりさせられます。

 続いて高畑勲が衝撃を受けたという、フランスの長編劇場アニメ『やぶにらみの暴君』(1952年。79年に『王と鳥』と改題され公開)の紹介を挟み、東映動画へ入社したての頃に演出助手を務めた『安寿と厨子王丸』、そして後に『かぐや姫の物語』につながった『ぼくらのかぐや姫』企画書などの展示へと続きます。

 初期は、結構絵を描いていたんですね。正直上手くはありませんが、何をどう描こうとしているのか、しっかりわかります。アニメ業界の中にいる人としてはアレですが、一般的な社会人であれば、絵心がある人として取り扱われるレベルかなと思いました。

 また、設定その他の文字はものすごい量で、緻密で、ねちっこいです。アニメーター、美術といった他スタッフとの情報を完璧に共有するんだという執念を感じました。

 さらに『わんぱく王子の大蛇退治』『狼少年ケン』といった作品が続き、長編アニメ『太陽の王子 ホルスの大冒険』へ至ります。展示会序盤の山場です。

 すごいですよ。脚本、設定資料、アイデアをまとめたものに加え、念入りな人物相関図、作中の時間軸をまとめたもの、各キャラクターのテンションの上下をまとめたチャート……とにかく用意された資料が膨大です。

 映像クリエーターだけではなく、マンガ家や作家など、物語を作ろうという人は、ぜひ一度見ておいたほうがいいのではと感じました。

 なお、『ホルス』は、製作スケジュールが遅れまくり、一部スタッフからの反感を招き、「タシケント国際映画祭」で監督賞を受賞するなど評論家や熱心なファンからの評価は高いものの、公開当時の興行成績は振るわず……と、後の高畑勲を象徴するような出来事満載の作品だったことを付け加えておきます。

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