ディープスポットになった岡山の台所・岡ビルの再開発計画案 消滅はカウントダウンか

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岡ビル

「大都会岡山」という言葉が広く知られるようなってすでに長い。周囲の市町村を飲み込んで人口70万人あまりで政令指定都市になった岡山市。正直「大都会」と名乗っても繁華街の規模では広島市には叶わない。存在感を放つのは、四国への玄関口になっていることと、交通網が整備されて大阪・神戸との関係性が強化されたことで関西圏の一部になっていること。

 そんなビミョーな街なので観光地としての魅力には欠ける。金沢の兼六園・水戸の偕楽園と並んで日本三大名園に数えられる後楽園はあるけれど、観光客の滞在時間は長くて半日。多くの洒落た店舗が並ぶ倉敷美観地区に比べて魅力はない。

 それでも、江戸時代からこのかた長く歴史を刻んできた都市だけあってか、味のあるスポットは多い。空襲も切り抜けていまだに現役で使われている「禁酒会館」。あるいは『まんが道』読者には知られるマンガ家・森安なおやの石碑などなど……。

 そんな岡山市の中心部にあるのが「岡ビル」である。岡山駅から商店街を抜けてすぐ。最近は「ディープスポット」なんて呼ばれ方もするが、地元住民には馴染みの深いビルである。

 もとは1946年にオープンした西川マーケットが起源。その後1951年に現在の建物が建設された。地上4階建てで一階に店舗。二階から上は住居になった鉄筋コンクリートのビルは、当時としては画期的だった。

 日本全体が郊外の大型店舗へとシフトしていった1990年代半ばまで、岡山市内の日常の買い物といえば「岡ビル」であった。一階の店舗には肉や魚に野菜。日用品を扱う店や、喫茶店、本屋なども入っており普段の買い物のすべてをここで賄うことができた。

 筆者の実家は岡ビルから100メートルほど東に位置するのだが、普段の買い物はまず「岡ビル」。あとは、柳川にあったダイエー系のディスカウントストア「トポス」。それと駅前商店街にあった「ダイエー・ドレミの街」といったところ。中でも市場の雰囲気のある「岡ビル」は新鮮で確かなものが買えるわけで、近隣はもとより遠方から訪れる客も多かった。

 しかし、時代は移りゆく。もはや商圏は郊外へと移行する時代(岡山市の場合、駅前にイオンがオープンするという特異な現象があるけど)。「岡ビル」もディープスポットと呼ばれるくらいに現役感はなくなった。かつては、昼や夕方は人のすれ違いが困難なくらいに込んでいた店も、いまは閑散としている。店舗の数もどんどん減り、気がつけば銭湯もなくなり消えゆくレトロビルという風情になっている。

 大企業の経営するスーパーと違い、個人商店の集合体である「岡ビル」の店舗は様々な味があった。中でも記憶しているのは、今はなくなった書店。書店というよりも「本屋」というのがピッタリな間口の狭い建物。いつも店番しているオバチャンは、馴染みにはいつも買っている雑誌を、わざわざ届けてくれていた。それどころか「買わなくてもメモをしていけばいいんよ」という本屋のとしてはどうかということも。その本屋もなくなって長い。

 そんな「岡ビル」周辺も、ここに来て変化の時を迎えようとしている。周辺では再開発準備組合が結成され大規模な再開発が検討されているのだ。「大都会」らしく、最近はタワマンも増えてきた岡山市内。駅から歩いて5分。雨でも商店街のアーケードを通れば濡れずに行ける土地は再開発には最良の土地だろう。

 かくて岡山の思い出も消え去るのか。だが、再開発はまだ先。2階から上の住居は激安価格で賃貸に出ている。
(文=昼間 たかし)

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