コスプレの評価基準は「かわいい」「似てる」だけではない――雑誌『COSPLAY MODE』に聞くうまいコスプレとは？

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■コスプレのクオリティーがここ数年で大幅に上がった理由

千都　そもそも、今は以前よりコスプレのクオリティがとても上がっているんです。前は既製品のコスプレ衣装なんてなかったですから。

大門　衣装を作っている業者さんも増えました。このコスプレをやりたいと思ったらネットで注文すれば、衣装が翌々日に届きますからね。

――『COSPLAY MODE』の広告欄を見ても「週刊少年ジャンプ」（集英社）掲載の『鬼滅の刃』（吾峠呼世晴作）をはじめ、さまざまな既成のコスプレ衣装が販売されていますね。

千都　ですので、衣装に関しては、クオリティが低い人が明らかに少なくなりましたね。そのため今は衣装だけなく、そのほかの要素も見られるようになりました。昔は衣装が似ていればそれで「うまい」と言われたんですよね。

　もちろん今でも衣装を作ることに特化されていて、既製品に一切頼らず鎧などを作るレイヤーさんもいらっしゃいます。ただ全体とするとそういった方はあまり多くないですね。

――衣装以外にウィッグも用意が大変なのではと思いますが。

千都　もともと特定のキャラの形に色や形を合わせた「キャラウィッグ」もありますし、また自分のウィッグを持っていけば指定したキャラのようにセットしてくれる美容室も秋葉原や代官山にあるんです。

――秋葉原は納得ですが、代官山がかなり意外ですね。

千都　先ほど大門が“コスプレにおいて「似てる」という言葉が以前ほど誉め言葉としての強度を失っている”と話しましたが、これは既製品のコスプレ衣装やウィッグが手軽に入ることで、「似てる」が達成しやすくなったというのがあるでしょうね。ですので、今は「素敵だ」という価値に移っていったのかなと。

――初心者でも手軽に始められるようになった代わりに、「うまい」と思われるためのハードルは上がっているんですね。

千都　あと、これは個人的な考えですが、最終的なコスプレ写真のクオリティだけで「うまい」というのも違うのかなという気がします。そこだけを求めるのであれば衣装を発注して、ウィッグも美容師さんに整えてもらえば、クオリティの高いものはできてしまいますよね。

――お金さえあればできてしまいますもんね。

千都　結果だけに注目するならば、今は「うまく」なりやすいとは思います。ただそれが本当にうまいのかと言えば個人的にはちょっと違うんじゃないかなと思っていて。「それだけじゃない」レイヤーに向けたのがこの雑誌『COSPLAY MODE』だと思っています。

――「それだけじゃない要素」とは？

千都　「コスプレ写真をSNS にアップする」ことだけではなく、キャラクターの服を作ったりキャラクターのポージングの真似をしたり、撮影の時に同じ作品が好きなレイヤーさん同士でおしゃべりをしたりとか、そのすべての「工程」がコスプレなんじゃないかなと。

――「リザルト」だけでなく、「プロセス」も大事なのだと。

大門　だから結局オタクの世界なんですよね（笑）。 百円ショップの店内を見てこれでアレが作れるとか、家にあるアレであのパーツを作れるんじゃないかとか、あれこれ色々考えていて、それで幸せなのがオタクですよね。

――リザルトのためあれこれ試行錯誤する行程を「コスパが悪い、面倒だ」と思うか「楽しい」と思えるかが、大きな境目ですね。

　＊　＊　＊

「リザルト」だけではなく「プロセス」も楽しいという千都氏の言葉は何もレイヤーに限らず、多くのオタクたちにも頷くものがあるのではないだろうか。

　ちなみに雑誌『COSPLAY MODE』は大門氏曰く、企画が毎号20以上あるとのこと。人気作品の衣装型紙がついていたり、今流行のキャラの衣装を再現し、生地のチョイスのこだわりについてユザワヤの店員が解説するなど「細かすぎてアツすぎる」コーナーが満載で、門外漢も楽しいというか、門外漢ほど知らない世界を楽しめる。すっかり情報収集がネットになってしまったものの、雑誌を読む楽しさを久しぶりに堪能した。

　次回も引き続き大門氏、千都氏に「コスプレのうまい、ヘタ」について解説してもらう。

（文／石徹白未亜 [https://itoshiromia.com/]）

◆石徹白未亜の過去記事はこちら（【おたぽる】【日刊サイゾー】）から◆

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