「表現の不自由展・その後」を改めて考える。アートに価値なんてない

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あいちトリエンナーレ2019公式サイトより

 ようやく秋になり涼しくなってきました。

 今年は猛暑のためか、さまざまな事件があった夏でした。中でも、秋になったのにまだくすぶっている「あいちトリエンナーレ2019」内で行われた「表現の不自由展・その後」をめぐる騒動は、長らく記憶されることでしょう。

 この一連の騒動。展示内容の是非には色々と議論のあるところですが、やっぱり酷いのは展示に関わった関係者の動向でしょう。展示が中止になって以降、関係者はあたかも被害者のごとく振る舞っています。「展示を潰されて可哀想」とばかりに。

 こんなスタンスを取る時点で、もう自ら敗北しているようなものでしょう。展示を見せたいのであれば、勝手に会場の愛知県立美術館の前に作品を並べればいいはず。

 それに、会場は壁を仕切って行き止まりになっているだけで展示物はまだ中にあるわけです。勝手に壁を取り払って「はい、表現の不自由展その後はこちらですよ〜」とかやっちゃう手もあるのに、誰も行動に移ろうとはしていません。

【編注:9月25日、愛知県の大村秀章知事は「表現の不自由展・その後」について、「条件が整い次第、速やかに再開すべき」との方向性を示した。だが翌26日、文化省は文化資源活用推進事業の補助金として交付する予定だった約7,800万円全額を交付しないと発表した】

 あらゆる人が発言したくなる燃料となった、この騒動。関わりを避けて逃亡を図る、普段「表現の自由」をしたり顔で語る人たちの醜さも見えたりして、それ自体が「表現の不自由展・その後」となっている点では非常に楽しい展示だったと思います。

 そうした中で、耳目を引いたのは貞本義行氏のTwitterでの発言でしょう。

 この発言の後に、貞本氏はこうも発言しています。

 ようは、貞本氏が今回の展示物は性に合わなかっただなということ。そして、もっとぶっとんだ展示を求めていることはよく理解できます。

 しかし、ふと首を傾げてしまうのは、貞本氏が「ドクメンタや瀬戸内芸術祭みたいに育つのを期待してたんだがなぁ…残念でかんわ」と記していることです。どちらも世間ではよく知られた芸術系の催しです。それに貞本氏はなにかの価値を見いだしているようです。

 この時点で、いかによりぶっとんだ展示を提案しようとも貞本氏の発言に価値がないのがわかります。ようは貞本氏はドクメンタや瀬戸内芸術祭のようなアートの催しには価値があるのだと信じているわけです。

 実際そうでしょうか。

 小生、ドイツで開催されているドクメンタはいったことないのですが、瀬戸内芸術祭は、たまたま瀬戸内海の島々を取材にめぐっている最中に出くわしたことがあります。

 世間の風評とは別に、地元の人の言葉は辛辣なものです。

 瀬戸内海の島々に展示された「アート」の見物にやってくる人々を、地域の人は「こんなところに、よう来るわ」と半ばバカにしたように語るのも何度も聞きました。地元の人にとってはアートの価値なんか興味なく、土産物屋や食堂を営んでいる人が儲かって喜んでいるくらいです。

「ベネッセアートサイト直島」のある香川県の直島なんて、アートで地域おこしをと公共施設もアートな建物になったりしていますが地元の人に聞くと「水が漏れるわ!」とか悪評ばかりを耳にします。

 つまり、芸術的だとか、アートであるとか、そんなところに価値を見いだそうとしていることには、すべからく価値がない。そんな当たり前のことを実績のある描き手すら忘却してしまうことに、驚きを隠せない夏でした。 

(文=昼間 たかし)

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