よみがえる60年前のラブロマンス――ドラマ『ルパンの娘』第10話

■60年前のロマンス

 60年前、巌と和一は友人同士だった。和一はマツに想いを抱き、告白する。2人は交際を始め、結婚を考えるまでになるが、ある日マツは和一が警察一家の息子であることを知ってしまう。その頃マツは、すでにLの一族の一人娘として泥棒稼業を行っていた。泥棒と警察が結婚できるはずがない。マツは、別れを決意し、いつ切り出すかと思い悩む。

 そう、まさに華と和馬が直面した悩みを、60年前にマツは経験していたのだ。マツが2人の関係を応援していたのには、そんな思いがあったからだろう。

 和一に別れを告げる決心をした日、マツは何者かに襲われ、顔を傷つけられてしまう。助けに行った巌が見たのは、現場から逃げていく、顔にアザのある男だった。

 怪我をしたマツを見舞い、警察に行こうと促す和一をマツは止める。そして、自分がLの一族の娘であること、そのため警察一家の和一とは結婚できないことを告げる。

「あなたとは、最初から結ばれない運命だった」そう言って、マツは和一の前から姿を消す。

 一方、巌は結婚を諦めたという和一を責める。「だったら何のために俺はマツさんを諦めたんだ」。そう、巌もまたマツに想いを寄せていたのだ。巌は、マツを襲った犯人を必ず見つけると誓うのだ。

 数年後、大阪で暮らしていたマツの元に巌が現れる。巌は、腕のいいスリになっていた。Lの一族に婿入りするために、スリの技を身につけていたのだ。そして、マツと巌は結婚し、尊が生まれたのである。

 マツは、華と和馬が付き合い出し、初めて三雲家に来た時に、和一の孫だと気づいていた。運命のいたずらに一番驚いたのはマツだったのかもしれない。

 ここで、このドラマの最大の謎が暴かれようとする。巌を殺したのかもしれない犯人、それは、60年前にマツを襲った人物と同じなのではないか。そして、巌によれば、それは「警察の手に負えるような相手ではない」とのこと。いよいよラスボスの登場といったところだ。

 三雲家が探しだしたその犯人とは、元警視総監で、和馬の婚約者・エミリ(岸井ゆきの)の祖父・巻英輔(浜田晃)だった。もしかすると、和馬とエミリの結婚も、何かの策略なのかもしれない。そう考えた尊たちは、2人の結婚式で花婿を奪い去ることを考える。

 結婚式当日、英輔の指示で厳戒態勢が敷かれる中、チャペルに現れたLの一族によって、和馬は誘拐される。

 今回見どころだったのは、なんといっても巌の意思の強さと愛情の深さだろう。以前、華の前に現れた巌は、「泥棒として生きる、そう決めた時から、全てを失う覚悟はできている。この命すらもだ」と言っていた。その「そう決めた時」こそ、マツのために生きようと思った瞬間なのだ。それから60年、その思いは少しもブレなかった。それこそが感動的なことである。

 そして、若い頃の巌を演じた柄本時生も見事だった。麿赤兒の持っている全身からにじみ出るようなアクの強さ、それと共通する凄みが感じられたのだ。

 いよいよ来週は最終話。普段なら、どんな展開になるか期待と不安が渦巻くものだが、このドラマに関しては、不安は全く感じない。今までの作りを見ればわかる。見る人を楽しませ、面白がらせるために、徹底的に力を尽くすのが、この番組の作り手の姿勢であることは間違いない。謎は全て解ける。そして、みんなが納得するようなラストを用意している。期待だけを持って、次回を待つことにする。
 
(文=プレヤード)

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