もし推しメンの無修正AV出演が発覚したら、ガチ恋オタクはどうなってしまうのか？　経験者へ聞いてみた

めりぴょん／山野萌絵

2019.09.15

「夜中まで起きてたんですけど、こたつで寝ちゃってて。朝の4時半に『お風呂入らなきゃ』って起きたら、推しのAV出演を暴露してる捨てアカにツイッターをフォローされていて。貼られていたURLに飛んでAVを見たら、『Aさんじゃん』って……。」

　寝起きにとんでもないショックです。恐らくゆうきさんの人生の中でも一、二を争う最悪の寝起きだと思います。

「最初に思ったのが『Aさん的にこれはバレたらまずいものなんじゃないか？』と、『AV出演が暴露されてるのがAさんにバレたらまずいんじゃないか？』で、持ってるアカウント全部でその暴露アカウントを凍結させようとスパム報告してました（笑）。たまたま起きてた友達と『これやばくないか！？』って爆笑して……最初はどうしていいかわからなかった」

　人間は困るととりあえず笑ってしまう。よくわかります。笑うしかない時ってありますよね。

「一度落ち込んだらもう二度と立ち直れない、死んじゃうかもしれないと思って起きてる友達に手当たり次第に電話をかけてました。ただ衝撃を受けたことが、僕、そのAVを一度見たことがあったんです。Aさんに出会ってから。前に少しだけ見て『これなんか違うな』って見るのを辞めていたものだった。Aさんが出ていたのは素人のハメ撮り物で、FC2コンテンツマーケットに出されてた。そのシリーズにはすごいかわいい子が出てるんです」

「まさか推しがAVに出ているわけがない」というバイアスがかかっているとはいえ、気づかないとは意外なものです。これを読んでいるあなたも、もしかすると既に推しのAVで抜いているのかも……？

「Aさんの出ているAVは、一回全部見てみようと試みたんですけど……前戯まで見て断念しました。精神的にキツくて。何も考えられなくて、その暴露の直後は『これでアイドルを辞めてくれる』しか思えなかったです。昼過ぎにやっと寝て……夜にまた起きて、『明日Aさんのいるグループのライブに行こう』って思ったんです。でも明日のライブにAさんはいない。AさんはAV暴露の後、活動休止になりました。Aさんってずっとライブを休まなかったんですけど『明日のライブにはいないのか、それは初めてか』と思ったら……ボロボロ泣きました。その日何も食べてなくて、『食欲ないけど食わないと倒れるな』って思いながら食事したけど気持ち悪くて吐いた（笑）。もうその日のことはそれ以外覚えてないです」

　その後、Aさんはゆうきさんが願っていた通り、本当にアイドルを辞めてしまいました。思わぬ形でガチ恋オタクの歪んだ願いが叶うことになってしまったわけですが……。

「暴露の翌日のライブを見ても、メンバーとは目は合わせられないし、最後の2曲はずっと泣いていて……。友達のオタクはゲラゲラ笑ってくれました（笑）。逆に笑ってくれたほうが良かったです。Aさんが脱退する前に、ポイントカードの特典の手紙を『書いておいて』って頼んでおいた分があるから、それを渡してもらえることになって。同じようなオタクが集められたお渡し会が開かれて、最後に一度だけAさんには会えました。でもお渡し会の会場にはプロデューサーとAさんとAさんのお母さんが来てて（笑）」

　AV出演暴露がきっかけで辞めたアイドルの最後のお渡し会に母親が同伴する。なかなか奇妙な取り合わせです。少なくとも今後一生書くことのない単語の並びではあると思います。

「最後に会ったとき、『ごめんね』って言われたけど、謝るならこれ終わった後に俺と会ってくれって言いたかった（笑）。それに関しては、もうどうでもよかったです。動画が出たことで裏切られた気持ちは全くなくて……AV撮った時期がアイドルをやっていた時期よりも前だったので。しょうがないかなって。Aさんのお母さんが『（ゆうきさんより前に来ていた他のオタク数人の時は）全部泣いちゃったけど、笑顔で終われてよかったね、この人が笑わせてくれたからこの人の時だけ泣かなかったね』って言ってくれたのが嬉しかった。それくらい最後のお渡し会は普通の会話しかしなかったです」

　それから時間も経ち、現在ゆうきさんは普通の彼女持ち男子として普通に働く日々を送っています。

「今でも続いてたらもっとしんどかったと思うし、……終わるきっかけがAVだったAさんは不本意だったんじゃないかな。今はガチ恋はだいぶ治まってるけど、もし急にインスタとかで連絡が来たら、それはもうやばいと思います（笑）」

　もし今でもAさんに会えるとしたら？　と私が聞くと「会いたい」とゆうきさんは即答します。「仕事はさすがに休めないけど、彼女との約束は放り出すくらいには会いたい（笑）」

　やっぱり、ガチ恋オタクというのは、どれだけ時間が経てども業の深い生き物。完全に忘れることなどできないのです。たとえ無修正AVに出ていたとしても……。

　この夏、新海誠監督の映画『天気の子』がヒットし、「愛にできることはまだあるかい」ってタイトルの歌が流行ったりもしました。けど私が思うに、愛にできないことは実際のところない、というか愛は私たちの制御能力を超えて暴走し、できないことまで勝手にできるように、忘れたいことでも覚えてしまっているように、できているのだと、改めてガチ恋オタクの話を聞きながら私は思ったのでした……。

（文＝めりぴょん／山野萌絵）