“生涯ドルヲタ”ライターの「アイドル深夜徘徊」vol.37

推しの過去とどう向き合うか――ドラマ『だから私は推しました』第6話

 ハナ(白石聖)の配信で加湿器が壊れていることを聞いた愛は、買ってあげようとして、ふと気づいたのだ。以前、厄介オタだった瓜田(笠原秀幸)が、ハナに洗濯機をプレゼントしていたのも、このような感じだったのではないか。

 そして、そのチャットでは、ハナがかつてパチンコ屋でバイトしていたこと、そこで瓜田に「ハナから」声をかけたことがバラされる。

 ハナに対する不信感はそれだけではなかった。

「ドルオタを辞めた」と告げて、その場をやり過ごそうとした愛に、真衣はハナに関して不穏な噂が流れていることを教える。

 それは、ハナが学生時代に陰湿ないじめをしていたというものだった。

「嘘」というのは、ひとつついてしまうと、それを隠すためにいくつもの嘘を重ねなくてはならなくなる。それがアイドルや芸能の世界だったらなおさらだろう。先に挙げた、写真を全て燃やしたアイドルだって、過去を偽ってたくさんの作り話をしたかもしれない。

 ただ、それは程度の差こそあれ、一概に咎めることはできないと思うのだ。

 会社の面接を受ける学生が、どこに行っても「御社が第一志望です」と言ったり、結構儲けている人が「いやぁ、給料少なくて」などと謙遜したりするのは、関係を円滑にするためのささやかな嘘だ。愛が真衣に対して「オタクを辞めた」と言ったのもそうだろう。

 そして、アイドルが、ファンに対してつく嘘も、それの延長線上のものと言える。ドラマの中で、ベテランのオタクである椎葉(村杉蝉之介)が「過去は過去、今頑張っていることに違いはない」と話しているのも、同じような考えからだろう。

 しかし、愛のハナに対する疑念は、さらに大きくなっていく。

 以前ハナが「病院から配信」と言っていのが、実は自宅からであったことに気づいたのだ。ハナは、ファンに心配してもらいたくて嘘をついたのではないか。それどころか、自分からもっとお金をもらいたくてそう言ったのでは? そんな思いが愛の中に渦巻く。

 そして、特典会の時、決定的な事件が起きてしまう。

 サニサイの特典会にある女性が現れたのだ。それは、ハナの高校時代の同級生の母親(森口瑤子)だった。彼女は、自分の娘がハナのせいで手首まで切り、今も引きこもったままだと責めたてる。

 それを聞いて愛の疑念はますます深まる。配信でのことや、学生時代のいじめのこと、問い詰める愛に、ハナは強く否定する。しかし、愛はもうハナを信じることができなくなっていた。

 愛は、自宅のサニサイグッズを全て捨ててしまう。かけていたものが大きいほど、ショックも大きいのだ。オタクを辞める、そう決断し、ライブにも行かなくなった愛。物足りなさは感じるものの、結局は昔に戻っただけのことだ。

 オタ卒をしてから、愛は偶然、サニサイメンバーの紀子(天木じゅん)に会う。あの後、ハナは、過去の噂などが広がりステージには立てない状況で、運営はハナを切るとまで言っているというのだ。

 過去の写真やスキャンダルによって、謹慎や脱退をさせられる例は、現実のアイドル界でもたくさんある。本人にしてみれば納得がいかないこともあるだろうが、運営はグループや他のメンバーを守らなければいけないのだ。それが、結果的に成功するか失敗するかは微妙なところだが、「スキャンダルに毅然と対応する運営」と思われれば、その後の活動にもいい影響をもたらすのは事実である。

 物語上、今回の出来事は、2カ月前ということになっている。現在、愛は警察で取り調べを受けていて、サニサイは解散ライブを始めようとしている。一体、この2カ月で何が起こったのか。たった2カ月で、状況が大きく変わる、現実にそんなことが起こりうるのがアイドル界なのである。

 そして、最後に個人的な思いを書かせてもらうなら、私はハナの過去や行動について、誤解が多くあったのではないかと思っている。「アイドルになりたい」「上を目指して頑張りたい」といった、ハナの思いは嘘ではないと思いたいから。ドラマの中のことだとわかっていても、どうしてもハナを信じたい、そんな気持ちになっている。

 そうなのだ。どうやら、私自身、すでにハナを「推し」てしまっているようなのである。

(文=プレヤード)

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