薔薇族の人びと ~内藤ルネさんと藤田竜さん、いいコンビだった! 第8回

薔薇族の人びと ~内藤ルネさんと藤田竜さん、いいコンビだった! 第8回の画像1『薔薇族』の人びと その素顔と舞台裏/伊藤文學(河出書房新社)

 ぼくは博文館新社刊の『2016年版 5年連用ダイアリー』を使って毎日、日記を書いている。ついこの間買ったばかりと思っていたら、もう3年目になっているのだから月日の経つのは早い。

 その日の出来事を短く書くだけだが、うっかりして書き忘れ、次の日書こうと思っても前日何をしたのか思い出せない。そんなぼくが40年以上前にルネさんと初めて出会ったときのことなど、覚えているわけがないが、記憶の断片をたどってみよう。

 ルネさんと藤田竜さんは、まだ日本人がパリなどにあまり行っていない頃、パリを訪れて日本に持ち帰って商品化したら売れそうなものを買い求めていた。いまでいう億ションに5部屋もあるリビングは広く、大きくて長い机があって、ふたりで考え出してたグッズが並べられていた。

 ふたりが考え出して絵つけをしたりした商品は、瀬戸の陶器工房と組んで作り出し、商品は街にあふれた。ノートなどの文具類、ルネさんが絵を描き竜さんがデザインする。ふたりだけの株式会社「LUNE」は、多額の売り上げがあったようで活気に満ちていた。

 そんな時代にふたりに出会ったのだろう。

 ぼくの著書、新社刊『『薔薇族』の人びと=その表顔と舞台裏』の「『薔薇族』黄金時代の表紙絵を描く――内藤ルネ」のタイトルの頁を読むと、内藤ルネさんが『薔薇族』に最初に登場したのは、1980年の86号だ。創刊してなんと9年も経っていた。それも内藤ルネの名前でなく、佐原サムというペンネームだった。

 藤田竜君は内藤ルネさんをぼくに9年間もなぜ、紹介しなかったのだろうか。最初のころ、ルネさんは小説の挿絵を書いてくれていたが、藤田竜君の描く男の子と、どっちがどっちと言って分からないぐらい似ているイラストだった。

 長い間、一緒に住んで仕事をしてきたのだから、お互いに影響しあって、本人も意識しないうちに、一心同体のようになってしまったのか。ぼくの想像だが、藤田竜君にしてみれば、なんとなくルネさんを『薔薇族』に登場させたくないという気持ちがあったのだろう。中原淳一さんの「ひまわり社」で、ルネさんが藤田竜さんより先輩で、ルネさんのほうがすでに世間で脚光を浴びていたわけだから、いつまでも後輩という気持ちが強かったのでは…。

 イラストイラストレーターとしては、ルネさんの方が上だが、デザインは竜さんが得意とするところだった。ルネさんは竜さんのことを「くされ縁」と言っていたが、いいコンビだった。
(文=伊藤文學)

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