ヘタの研究 vol.8

「テレビ・映画」と「舞台」における演技の決定的違いって? 松崎史也氏に聞く!【ヘタの研究】

演技のウマい、ヘタを分けるものとは?(Photo by Pixabay)

「物事が“ヘタ”なとき、そこにはパターンや規則があるのではないか? そのパターンを知ればウマくなる手助けになるのではないか?」

 この仮説のもと、当連載「ヘタの研究」ではさまざまな物事の「ウマい、ヘタとは何なのか?」をその道の専門家に伺っている。今回のヘタの研究のテーマは演技。前回に引き続き演出家・脚本家・俳優と、さまざまな立場で演劇とかかわる松崎史也氏に伺う。今回のテーマは「舞台」と「テレビや映画」の演技の違いや、舞台の楽しみ方について。

【前回のインタビューはコチラから】
若手俳優の演技がここ10年で「ウマく」なった理由とは? 松崎史也氏に聞く!【ヘタの研究】

■舞台の「間」と映画やテレビドラマの「間」には、決定的な違いがある

―― テレビドラマや映画と比較したときの舞台の違いとは何でしょうか。

松崎史也氏(以下、松崎) 基本的に舞台のセリフとセリフの間って(テレビや映画より)短いんです。テンポよく、あまり間をとりません。相手の台詞尻でちょっと食って言うようなことを良しとされやすいんです。

――なぜなのでしょうか?

松崎 舞台ではお客さんは舞台全体を見ていられるので、登場人物について受け取る情報量がテレビや映画より多くなるためです。舞台でしゃべっているのは中央にいる2人でも、その横で立っているほかの人たちの表情やしぐさといった情報を、お客さんは意識せずとも、同時に受け続けているんです。

――見ている側としてはしゃべっている俳優だけを見ているつもりでも、実は舞台全体を見れていると。一方映画やドラマだと「カメラ」がありますもんね。

松崎 はい。カメラはクローズアップできます。クローズアップされた状態の場合、俳優が感情を見せてからしゃべらないと、見ている側にして見れば「この人は何でそう喋ってるのかわからない」という状況になってしまいやすい。 

 一方、舞台は観客が受け取れる情報量が多いため、映画のように十分な間を取ってしゃべると退屈になってしまうんです。お客さんに「予想通りのことを言ってる」と思われてしまう。なのでお客さんが情報をキャッチしきるより一瞬早く動いた方が、舞台は面白く見続けられるんです。

 そして今度はそれを逆手にとってすごく大事なことを言うときにはあえてちょっと間を取ってみたり、逆にすごく早く大きく言ったりする、なんてこともできます。映画でそんなことをしたら違和感が強いと思いますが、これは舞台ならではの出力の違いですね。

■「舞台」と「映画やテレビドラマ」では受け手の心境も大きく変わる

――私は映画やドラマやアニメを見るときは結構視線が冷たくて、この俳優は演技がヘタだな、この声優は声があってない、今ダレてるなとか減点法で見てしまいがちです。一方で舞台を見ているときってそうならないんですよね。声や演技に思うところのある人でも、嫌いになれないとういか、見ているうちに最終的には皆好きになるというか。

松崎 舞台ならではの不思議さですよね。ただ、これもやはりカメラが大きいんじゃないかと。「目の前にいる」人はやはり強いです。

 映画やドラマなどで「なんでこの子はこんなにヘタなのに大作に出ているんだろう」みたいなケースってあったりしますよね。それでも、撮影現場ではその子は魅力的という場合も中にはあるんだろうなあと。もちろん、カメラ越しにもその魅力が伝わるのが芸であるべき、というのも大前提ですけども。

――カメラは残酷ですね。

松崎 はい。カメラのレンズを1枚介してしまうことで、見る方は徹底的にドライになれてしまうんです。

――減点法で物事を見がちな人ほどライブや舞台といった「生」は発見が多いのではないかと思います。「なじみのある減点法でなく、加点法でつい見てしまう感覚」は新鮮でした。

松崎 当然我々創り手はお客さんの加点に甘えず丁寧に誠実に創った上で、の話ですが。そうなりやすい側面はあるように思います。

「テレビ・映画」と「舞台」における演技の決定的違いって? 松崎史也氏に聞く!【ヘタの研究】のページです。おたぽるは、その他ホビーの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!