華山みおの物語探索その70

『ダンスウィズミー』ミュージカルの非現実性を逆手に取った面白さ!邦画ミュージカルの礎となるか?

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映画『ダンスウィズミー』オフィシャルサイトより

 今回は矢口史靖監督の映画『ダンスウィズミー』をレビューします。

 一流商社に勤務する鈴木静香(三吉彩花)は、曲が流れた途端に歌って踊らずにはいられなくなるという催眠を催眠術師にかけられる。翌日から静かは、テレビから流れる音、携帯電話の着信音、駅の発車メロディーなど、ちまたにあふれる音楽に勝手に反応してしまう。 なんとか術を解いてもらおうとするが、催眠術師はどこにもいなかった……。

 ミュージカルはお好きですか? 私は大好きです。小さな頃から『サウンド・オブ・ミュージック』に魅せられ、歌と踊りによって物語が鮮やかに彩られるあの感じがたまらないのです。古今東西のミュージカル映画をたくさん鑑賞してきました。

 しかし邦画でミュージカル映画は? と言われてもパッと思いつくものがありません。舞台ではミュージカルも多々上演されていて、劇団四季や宝塚なんかはもはや説明いらずのすばらしさですよね。最近では、2.5次元舞台で「〇〇ミュ」と称されて流行ったことで、ミュージカルへのハードルが下がってきてはいますが、やっぱり邦画でミュージカル映画は少ないと思います。

 『ラ・ラ・ランド』や『グレイテスト・ショーマン』のヒットなどからも分かるように、日本人はミュージカルが嫌いなわけではないのでしょう。でもなぜ?

 それは、「違和感があるから」ではないでしょうか。

 元々ミュージカルは違和感のあるものですよね。今まで普通にしゃべっていた人達が突然クルクルまわって歌い出すのですから、もしも日常生活で始まったら違和感どころではなく、ちょっとした恐怖です。

 邦画はどこか日常の延長のような世界観を私たちに見せてくれます。知っている土地、見たことがある景色、その中で突然歌い踊る人物が出てくることは、やっぱり違和感でしかないでしょう。私たちが見知っているミュージカル作品のほとんどが、自分とは違う国の、違う世代が題材です。だから安心して、その虚構の世界を歌と踊りで彩っている構成を受け入れることができるんでしょうね。

 『ダンスウィズミー』は東京の一角からスタートします。主人公の静香は大企業に勤めているものの、普通のOLです。そんな彼女が催眠術をかけられたことによって、ひとりだけミュージカルの世界に行ってしまうのです。

 音楽が流れるとその音楽に合わせて歌い、踊らずにいられなくなるという設定は日本では成立し辛いです。でもそんなミュージカルを、「しでかしてしまう」というハプニングとして描くことで面白く、かつ違和感なく描くのです。

 もちろん自主的にミュージカルモードに入るわけではないために、一般的な心情を吐露して歌う従来のミュージカルとは違った趣となっています。私は最初これに違和感がありました。ミュージカルってなんだ? という疑問がずっと頭の中にあったのですが、パンフレットの中に記載されている監督のインタビューに、まさにその疑問に答えてくれている部分があって腑に落ちました。

 映画を観終えて外に出てみると、世の中にはいかに音楽で溢れていることに気付かされます。この中をミュージカルしないために必死になる静香の奮闘を思い出すと、ついつい笑顔になってしまうし、この音楽にダンスがつくとしたらどんなものになるだろう、と想像もたくさんしてしまいます。映画を観た後にその世界が自分の日常に影響をもたらすこの感じ、とても好きです。

 ミュージカル体質になってしまったことから静香が催眠術師を見つけ出し術を解いてもらうまでのてんやわんやが描かれる中、ミュージカル映画の中では普通スルーされるような世知辛い状況もしつこく描写されます。

 それは、人が生活するうえで切っても切れないお金のこと。歌って踊る演出の一環でレストランの中を滅茶苦茶にしたら何が起こるのか。映画だったら次のシーンに移行して終わりですが、この映画では巻き込まれた客は怒って帰るし、割れたグラスやお皿、ワインの料金は請求されます。
 
 移動するにも車のガソリン代もかかるし、食事代もかかります。人を探すには興信所のお金だってかかる。人が暮らすという事はお金がかかる。事件解決のために駆け出したって身一つでは何もできないということが結構リアルに描かれています。

 このリアルな日常感が徹底されているから余計に静香に賭けられた催眠術の異常さが際立ち、彼女の珍道中が魅力的になっています。他にも冷静につっこんだらおかしいよってことはあるかもしれませんが、そういうの全部置いておいても最初から最後まで楽しく見れる映画でした。

 主人公の静香を演じる三吉彩花さんの歌声が、甘すぎず低すぎずの伸びやかな感じでとても素敵でした。後半はほぼジーンズだったけどオフィスで着用しているフレアスカートの広がり方がもうたまらない~。ミュージカルで女優さんが回ったときのスカートの裾がふわって広がるのが、たまらなく好きなんです!!! もっと円形スカートで踊って欲しかったなぁ。静香以外にも個性的なキャラクターが無理なく魅力的に描かれていてどのキャラクターもみんな素敵でした。
 
 音楽を聞いて歌い踊る、そんなことがついついしてみたくなってしまう素敵な映画です。日本ではまだまだ珍しく、かつハードルの高いミュージカル映画をスクリーンでやっている間に、ぜひ観に行ってもらいたいです。
(文=華山みお)

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