中国版コミケ「COMICUP24」参加記録 中国人オタクの経済的余裕を実感【その3】

 そんな華やかで、経済的な豊かさを感じるイベント。しかし、光あるところには影のあるもの。それを感じたのはイベント終了後だった。西田さんたちとタクシーで宿に戻ろうとタクシー乗り場に向かう。次々とタクシーはやってくる。目の前に止まった、中国でも大手のタクシーに西田さんが「ここにいける?」と聞いたが、すぐさま憮然とした表情をした。

「やめよう……二百元だって」

 会場に来た時の料金のおおよそ4倍である。その後も次々とやってくるタクシーが、次々と3倍、4倍の値段をふっかけてくる。よく知られる社名のタクシーから白タクまでもが入り交じって。誰もそんなものには見向きもせず、タクシーアプリで自分で呼んだタクシーを待っている(ネット決済なので明朗会計)。自分たちもそうしていたのだが、目の前は次々とやってくる、ボッタクリタクシーで混雑していた。

 時折、単車に乗った警察官がやってきてタクシーを追い散らす。それでも、警察官がいなくなるとすぐに戻ってくる。それどころか、警察官を怒鳴っているタクシーすらある。あらゆる方法で国民を監視している、この国で警察に逆らおうなんて気はまず起きないのだが、そうでもない人もいるのだ。そこには、イベントで見た華やかさをは違う影の部分が見えた。

 イベントが終わった翌日、翌々日と帰国までの限れた時間、できるだけあちこちを見て回った。半日は蘇州を歩いた。蘇州といえば『蘇州夜曲』の歌で名高い一種の聖地。でも、それももう過去のものだった。僅かに観光地として保存されている地域を除けば、もう歌に歌われたような水郷の風景はなかった。そして、アジアの田舎町的な風景も、ちょうど再開発で消滅している最中だった。

 まだ、2階家のゴミゴミした風景が残っている地域の横では地下鉄の建設工事が進んでいる。もう数年もすると、周囲もすべてが高層ビルになるのだろうということは、容易に想像ができた。唯一、中国を感じたのは蘇州駅の横にあるバスターミナルのトイレが、まだオープントイレだったことくらいであった。

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 少し離れた都市でもそうなのだから上海も同様。租界の雰囲気が残る外灘は完全な観光地として保存された地域。それを除けば、歴史を感じさせるものはほとんどない。あっても観光地か、これから再開発待ちの地域くらい。

 そうやって発展している中国。結果、文化は爛熟し、マンガやアニメ文化も栄えている。こうしたパワーに溢れる彼の地に対して「日本は負けている」というのは容易だ。けれども「負けている」とは思いたくない。逆にありがちな「日本スゴイ」にも組みしたくない。確かなのは、かつて日本も持っていたけれども今は欠けている部分。それだけの富があるならば、少しでも恩恵に預かろうという精神性である。

 近年、誰もが当たり前のように「まったり」とか「癒やし」なんて言葉に心を惹かれるようになった。まさに前へ進むことを避けた現状維持の精神。それは、この国をどんどんと袋小路に追い込んでいるようにも見える。社会がどうのとか、小賢しい理屈を並べる気など毛頭無い。ただ、もう「まったり」とか「癒やし」なんて言葉は使わないようにしようとだけ、思った。

~完~

(文/昼間たかし)

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