『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』も見ようによっては面白い! 頑張って“良かったね探し”をしてみた

■映画館で聴く、すぎやまこういち音楽が素晴らしい

『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』では、ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズを支えてきたすぎやまこういちが音楽監修を、さらに音楽演奏を東京都交響楽団が務めている。

 映画館で聴くすぎやまドラクエ音楽は、迫力があって深みがあって、心地良い限り。『ドラゴンクエスト』をテーマとした演奏会も過去に何度も開催されたことがあるが、そういったイベントに参加できなかったという方なら、一見(聴?)の価値はあるのでは、と思う(ただし、音楽の使い方やタイミングにはクセがある)。

■『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』の細かい“良かったところ”

 原作ゲーム『ドラゴンクエストV』ファンからすると、なかなか捗らない“良かったね探し”。しかし、それでは記事が構成できないので、さらに細かいところになるが、良かったなと思うところをダラダラと列挙してみる。

 まずはゲームの前半部分、つまり主人公がパパスと過ごす幼少期から奴隷になってしまうまでの展開のまとめ方は、褒めてもいいところだと思う。

「まとめ方が乱暴すぎる」という意見も目立つが、尺を考えれば、まずまず上手にコンパクトにまとめられていたのではないだろうか(ただし、後半のストーリーには不満は残る。批判が集中するオチを除いても)。

 次に、感動的なシーン、物語の重要なポイントや感情が大きく動くようなシーンでは、これでもかと盛大にすぎやま音楽が奏でられる演出。「ここで感動すべきなんだよ」と、制作陣が全力で教えてくれるので、映画をあまり見ない人、原作ゲームを知らない人でも、感動ポイントがわかりやすいのも、良かったポイントとして挙げられるかもしれない。

 ベタだが、ノスタルジックな気持ちに浸らせる各種の演出も、原作ゲームが好きだったおっさん・おばさんにはうれしいかもしれない(ただし、ゲーム画面を意識したと思われるドット文字が登場するのだが、どう見てもファミコン時代の8ビットフォント。『ドラゴンクエストV』はスーパーファミコン作品だったから、文字はもっと流麗だった。こういった細かいところの齟齬がちょいちょい存在するので、気持ちよく「懐かしい」という感覚に浸れない。個人的には『ゲームセンターCX』のオープニングの方がクオリティーは高い気がする)。

■『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』、最初に言い出したのは誰なのかしら

 ここまで頑張って“良かったね探し”をしてみたわけだが、原作ゲームファン以外の人に届いているものだろうか。

『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』は酷評・炎上を通り越し、無視・スルーの領域にたどり着きつつある。公開初週の土日2日間で興収3億900万円をあげ、興収ランキング4位スタートを切った同作だが、翌週には7位に転落した。

 しかし、20年以上にわたって愛されてきた『ドラゴンクエスト』シリーズ屈指の人気作を、こういった作品に仕上げてしまったことは長く記憶に留めるべきだろう。

 なお、山崎貴総監督は、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』とほぼ同時期に公開された『アルキメデスの大戦』(7月26日公開)で監督・脚本・VFXを手掛けているが、こちらは『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』とは違って、好評を博している。

 ジャンルによって得手不得手はあるだろうが、本来はそこまで酷評を招く作品を制作してしまうクリエーターではないはずだ。

『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』で酷評されるべきなのは、山崎貴総監督や「原作ゲームをプレイしていない」と語る八木隆一、花房真両監督ではなく、このスタッフたちに制作をオファーした製作のトップ、あるいは『ドラゴンクエストV』映画化企画の言い出しっぺではないだろうか。

 それが誰なのかは判然としないが、一応パンフレットに記載されている製作、プロデューサー陣の名前を記して、この稿を締めたい。

製作:市川南 沢桂一
共同製作:畠中達郎 松田洋祐 谷和男、島村達雄 石川豊 加太孝明 阿部秀司 森田圭 中西一雄 安部順一 舛田淳 田中祐介 坪内弘樹 昆野俊行 赤座弘一 大鹿紳 小櫻顕 毛利元夫
エグゼクティブプロデュ―サー:阿部修司 臼井央 伊藤響
プロデューサー:藤村直人 依田謙一 守屋慶一郎 渋谷紀代子 川島啓太

 なお、2020年夏季オリンピックのエンブレムのデザイン盗用疑惑で有名になったコンビ、電通の高崎卓馬氏&佐野研二郎氏も、それぞれ『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』の宣伝クリエーティブディレクター、宣伝アートディレクターとして名を連ねている。

(文/馬場ゆうすけ)

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