中国版コミケ「COMICUP24」参加記録 中国語が行き交う茨城空港。オバサンとの対決も……【その1】
2019.08.15
――今年6月、中国・上海で行われた同人誌イベント「COMICUP24」。日本の同人イベントに慣れていても、異国の地となるとワケが違う。本稿では、「COMICUP」に興味がある人向けに、日本からの参加記録を綴っていく。
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東京駅。そこは早くも中国。
どんなところか、よくわからないままに上海の同人誌イベント「COMICUP24」を目指す旅。ことの是非は別として、中国人のパワーの洗礼は、東京駅で早くも味わうことができたのである。
今回、中国へ向かうために利用したのは、春秋航空。最近、中国各都市へ路線を就航させている格安航空会社である。この時期、ほかの航空会社ではどうしても片道で2万円を超えそうなところが、ここだけは本当に安い。なので、選択肢はほかになし。その出発地は茨城空港。羽田でも成田でもなく、聞くことはあっても利用する機会のあまりない空港。
そんな空港なのに、最近は利用者が増えている。空港使用料を抑えて就航路線は増加。おまけに、東京駅発の連絡バスは飛行機に乗る人に限り運賃は500円なのだ。
常磐線からバスを乗り継ぐと2000〜3000円かかるというのに、これは安い。ならば、バスで茨城空港から上海へのルートのほかに選択肢はない。
でも、このバス。大事なことが一つある。それは、事前予約制であること。座席空いていれば乗せてはもらえるけど、あくまで予約者優先なのだ。
そのことを見落としていたのに気づいたのは、出発の前日。まさか満員ということはあるまいと8時半出発のバスを目指して、8時に東京駅のバス乗り場に到着した。
するとどうしたことだろう。すでに10人以上が並んでいる。中国人は早くから並ぶ習慣があるというが、どうも本当の様子。果たして乗ることができるのか、待つこと20分あまり。どんどん列が伸びて不安になった頃に、ようやく乗車案内の女性がやってくる。
なぜか息を切らしてやってきた案内の女性は、いきなり大きな声で案内を始める。
「××××〜!!」
おや、周囲の案内放送とかぶって聞き取れないのか。違う、最初から案内が中国語である。並んでいるのも見渡せば日本人などいない。いきなり乗客が質問をして、それに答えている会話も聞き取れない。
ここで、バス乗り場の案内係が登場。こちらは日本人。彼が問題にしているのは列がずーっとまっすぐに伸びてること。
「ほかの乗り場の人が困るから列を折り曲げてよ」と、日本語。「ああ、そうですね」と、日本語で答えた女性。
すると、また中国語で「××××~!!」と。「予約してる人と、キャンセル待ちの列をわけてよ」といわれて、まあ中国語。
「ちょ、ちょっとなにをいってるか、わかんないよ」
ポケトークは手にしている案内係だけれども、困惑気味で注意が入る。ようやく日本語で「じゃあ、予約のない人はこっちの列です」といわれ、列に並ぶとなぜか、オバサンが、ぼくの前に。ほほう、これが大陸のノリかと負けてなるかと、自分が前に。すると、オバサンがまた前に……これを三回繰り返す。
「オバサン、こっちが先だよ」
日本語で主張すると、オバサン、なぜか昔のタモリの芸のトーンで反論してくる。
「ワタシ、もっと早く来てたョ!!」
通例の日本人であれば、ここで言い争いを避け、後から「ホント、中国人はマナーが悪いんですよ」という話のネタにするところ。でも、そうはいかない。これから向かうのは、腹の中で「モラルがないなあ」「マナーが悪いなあ」なんてボヤいても、なにも得ることができない土地。なので、こっちも猛烈に反論する。
「いやいや、こっちが先だ。負けないぞ!」
なぜか「負けないぞ!」のセリフに、オバサンのほうがたじろぎ、なんとか勝利。そして、キャンセル待ちの全員も乗ることができてバスは出発する。見渡すと、日本人は自分のほかには2人だけ。それも会話に聞き耳を立てると、空港近くに用があって乗っているだけの人の様子。
そんなに日本人は使わないものかと考えているうちに、バスは一路茨城空港へ。車内は驚くほどに静か。電話をする人もいないし、音楽を聴いたりゲームをしている人もちゃんとイヤホンをしている。ま、朝も早いし寝ておきたいのか。
でも、朝からの一波乱で今日はまだまだ、なにかありそうな予感があった。
空港につくと、魔公子さんはすでに到着していた。今回の上海取材にあたり、魔公子さんに色々と話を聞いたのだが、偶然にも同じ飛行機を予約していたのだ。ただし、魔公子さんは、上海のイベントを終えた後に、そのままスペインのイベントへ参加する予定。
「その後は、香港。フランスのイベントも……いったい、コミケの原稿をどうやって描こうか」
いよいよ入出国のスタンプを押すページがなくなってページを追加されたパスポートを手にした魔公子さんは、大変だけど楽しそう。ここでさらに、現地の事情に詳しいAさんも合流。あれこれと知らない話を教えてもらいつつ、チェックインの開始時間を待つ。
この時、極めて明るい魔公子さんも、ちょっとだけ不安はあった。というのもスーツケースには中国とスペイン、二カ国で頒布するための同人誌が入っている。そもそも同人誌を「即売」ではなく「展示」しているのが建前でイベントが開催されている国。
滅多にあることではないが、スーツケースを開けて検査をされ、同人誌を没収されることもあるという。エロとか政府批判の内容が理由ではない。出版の許可を得ていない本を大量に持ち込むのが問題となるという論法。よっぽど日頃の行いが悪くなければ、そんなこともあるまいが、やっぱり心配は心配だ。