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ヘタの研究 vol.5

キムタクはなぜ「何を演っても木村拓哉」なのか? 演技指導者に聞く!【ヘタの研究】

2019.08.15

■木村拓哉は「木村拓哉の型」に苦戦している

――伊藤さんの場合は「自然派」ですが、さまざまな演劇ジャンルがあり、中にはミュージカルや歌舞伎のように、その芸術特有の「型」が求められるジャンルもありますよね。

伊藤 はい。「自然派」と「型」タイプでは、それぞれ違う難しさがあります。「自然派」はある意味日常生活と一緒で、できる人はすぐにできたりもするのですが、「演技をする」という気持ちを手放さなくてはいけない難しさがあります。一方「型」タイプは型があるという点で分かりやすさはありますが、その「型」特有の技術の習得がはっきりと求められます。

――「演じる」ことは共通していますが、「自然派」と「型」では採点方法がまったく異なっているんですね。

伊藤 ですので「型」系の演技の経験者や、歌やダンスの経験者は「自然派」演技に苦戦する傾向があります。彼らはどうしても「表現」しようとしてしまうんですね。

「自然派」の分野では、自分自身でその役ができるようになってから、その役のしゃべり方や動きを入れていくのが本来の順番です。それがいきなり役のしゃべり方や動きから入れると上っ面な感じになってしまいます。これは「型」系出身の人が陥りがちな傾向ですね。

――子役演技にも言えるかもしれないですね。

伊藤 また「自分のキャラクター」が弊害になるケースもあります。キムタクがそうですが、役が入ろうとするとやっぱり違和感を自分が覚えてしまい、元の自分でいい、となってしまう。

――「何を演じても木村拓哉」は木村拓哉という「型」に本人が忠実すぎるところに問題があるんですね。ある意味でアイドルの鑑とも言えますが……。それまで培った「型」が自然な演技の弊害になっている人は、どうすればいいのでしょうか。

伊藤 表現しようと思うのをやめると、一気によくなりますね。歌手の人たちがいい声で話すのをやめよう、といったん思えれば、歌手はもともと楽しもうという気持ちが強い人が多いので、一気に演技もうまくなります。歌手出身者は結構いい役者がいると思いますよ。

――伊藤さんが見てうまい役者は誰でしょうか?

伊藤 日本の役者で若手ですと菅田将暉、女優は蒼井優、ベテラン勢だと樹木希林、リリー・フランキーですね。リリー・フランキーは悪役から、のほほんとしたおじさんまでこなしますね。作品であげると映画『ダークナイト』(2008)のヒース・レジャーはすごかったです。観ながらオスカーを獲るだろうな、と思いました。

 菅田将暉は演技がうまいというよりは歌などさまざまなことにチャレンジして魅力がある、という方が近いですね。同じく若手の池松壮亮は演技はうまいですが、素の自分に近い役を選んでいるかな、という印象はあります。

* *

 後編も引き続き伊藤氏に、役者の「役が抜けきれなくて日常生活に支障が出る」発言の真偽や「演じるのが難しい役とは」など、これからの映画、ドラマ視聴が楽しくなる演技の「ウマいヘタ」について聞く。

(文/石徹白未亜 [https://itoshiromia.com/])

伊藤丈恭著『人前で変に緊張しなくなるすごい方法』(アスコム)

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