「表現の不自由展・その後」中止がもたらした甚大な影響……コミケ中止の可能性も?

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「あいちトリエンナーレ2019」公式サイトより

 夏のコミックマーケットを前にカタログチェックをしていたら、突如ふりかかってきた事件。国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で「従軍慰安婦」を題材とする韓国人作家の「平和の少女像」や昭和天皇の写真を利用した作品などが出品され抗議と脅迫が殺到。像を展示していた「表現の不自由展・その後」コーナーが打ち切られた事件である。

 この事件は、コミケを楽しみにしている人々にも決して他人事ではない。

 近年、様々な抗議や脅迫によってイベントが中止になる事件は相次いで怒っている。これは思想の左右とかによるものではない。Aという意見に反対するBの意見を持つ人々の抗議や脅迫でイベントが中止になったかと思いきや、その逆も起こる。そのどちらもが、互いに「表現の自由」といった言葉を掲げる。それに対する反論はといえば、公共性だとか税金がとか、これまた思いつきの言葉で鬼の首を取ったかのように主張するのだ。

 さて、この事件を通じてより鮮明になったのは、あらゆるイベント主催者が抗議や脅迫に対して、極めて弱腰になっているということ。すなわち、誰でも気に入らないイベントがあれば、イベントの規模に拘わらず「火をつけてやる」などと脅迫をすれば中止に追い込めることが、わかってしまったのだ。

 いわば悪しき事なかれ主義も蔓延。多くのオタクが知るのは、2012年の『黒子のバスケ』事件であろう。

 2012年から翌年にかけて、人気漫画『黒子のバスケ』の関係先に脅迫状が送付されている事件。たった一人の男の行動で、影響は全国に及んだ。不測の事態を危惧し、会場が貸し出しを拒否し関連イベントが次々と中止に追い込まれたのだ。

 そうした中でコミケすらもイベントの一部中止に追い込まれたことを覚えている人は多いだろう。2012年12月に開催されたコミックマーケット83の二日目「黒子のバスケ」関連のすべてのサークルが出展中止を余儀なくされ、会場のホール丸々ひとつが、がら空きになってしまったのである。

 コミケに脅迫状が届くのは、これが初めてではなかった。それ以前の2008年にも「手榴弾を投げ込む」という脅迫状が届き手荷物確認を強化する騒動もあった。これ以外にも、脅迫状風なものは度々届いているという。だから主催するコミックマーケット準備会も中止までは考えていなかった。

 しかし、会場である東京ビックサイトは、関連サークルの出展の自粛を要請。難色を示す準備会に対して「もし今回『黒子のバスケ』を扱うのならば、来年夏以降は会場を貸すことはできない」とまで、発言。ついに、「黒子のバスケ」を扱うサークルの自粛へと追い込まれたのである。

 この時、取材に応じた東京ビッグサイトの関係者は次のように証言している。

「東京ビックサイトには都庁からの出向者も多いんです。そうした人々が“自分の任期中は、なにか問題が起こっては困る”と思っているんです。その結果、準備会に対して強硬な態度に出たと思います」

 まさに意識は「表現の不自由展・その後」と変わらない。この騒動の時も警察当局は準備会に「犯人が逮捕されるまで、開催を中止してはどうか」と、犯人を逮捕するとか警備を厳重にする以外の対応を求めたあたりも同じである。

 こうして犯人逮捕までの間に「黒子のバスケ」の騒動は、東京ビックサイトのような巨大な組織であっても、脅迫に簡単に屈してしまうことを知らしめた。そして、当時から、自分の気に入らない作品や表現、イベントなどがあれば、ちょっと脅迫すれば簡単に潰すことができることが、露呈させたと指摘されていた。

 それから7年に時を経て「表現の不自由展・その後」はイベント潰しがより簡単になっていることを教えてくれている。SNSなどで、事務所の電話番号や関係者の個人情報暴露して煽る。そして、メール、電話、FAXなどで抗議や脅迫。わずかな労力で簡単にイベントが潰せてしまう。

 愛知県という巨大な自治体までもが、そんな稚拙な抗議や脅迫に屈してしまうことがわかった今、民間有志の集まりであるコミケは、もっと危機的状況に追い込まれたといえるだろう。

 あと開催まで数日の間に、ガソリンなり爆弾なりの物騒な言葉を用いた脅迫がなされ、夏コミが中止へ追い込まれる可能性はまったく否定できない。

 もちろん、そんなことはないほうがいいに決まっている。でも、今はそういう情勢になってしまっているのだ。

(文=昼間 たかし)

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