“生涯ドルヲタ”ライターの「アイドル深夜徘徊」vol.31

【書評】“大勢の中の一人”が生きる濃密な人生たち――大木亜希子著『アイドル、やめました。 AKB48のセカンドキャリア』

「あの人は今」といったテレビ番組で、アイドルが昔の暴露話をするのが、あまり好きではない。

「メンバーの仲が悪かった」「実は彼氏がいた」などという告白は、ファンからすれば聞きたくないことであり、ある意味「夢」を提供していた存在なのだから、そのことは最後まで口にせずにいてほしいと思うのだ。

 だからといって、アイドルを引退した後、どうしているかに全く興味がないわけではない。一度は自分が好きになり追いかけていた人が、その後どのような人生を歩んでいるのか、それは確かに気になる。

 そんな中、元SDN48メンバーだった大木亜希子氏の書いた、アイドルのセカンドキャリアを追った本『アイドル、やめました。 AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)が、アイドルやアイドルファンの間で話題になっている。

 内容は、現在はライターとして活動する大木氏が、かつて48グループの一員であった8人の女性を取材し、アイドル時代の思いや、現在の職業に就くまでの歩みをまとめたものだ。

 正直、読む前は、アイドル時代の裏側を聞き出すような、幾分スキャンダラスな内容ではないかと心配していた。しかし、そうではなかった。もちろん、アイドル時代の苦しかった経験なども語られてはいるが、多くの人の話の根底には、アイドルをしていたことの誇りと自信のようなものが感じられた。そしてそれは、アイドルファンとして純粋に嬉しいことだった。

 この本は、まず、著者自身がSDN48のメンバーとして活動してきたことを振り返り、そしてライターとして“セカンドキャリア”を送るまでの経緯を語っている。この導入部で、彼女の思いと覚悟が見えてくる。

 私は、いろいろなことを検証する時、「当事者」であるか否かが大きな問題だと思っている。どんなことでも、現場にいて体感している人にしか見えないものはあるし、書けないこともある。一方で、そこで起きている事象を、ある意味冷めた目線で観察し、客観性を持って分析できなければ、物事の本質は見えてこないようにも思うのだ。

 彼女は、自身が48グループの一員として、紅白歌合戦に出演した日のことを、客観性を持って綴っていた。つまり、彼女には自分自身を客観視できる能力が備わっているのだ。そんな才能を持ち得た著者が、広い意味では“身内”とも言える、48グループの元メンバーに会い、話を聞く。主体と客観がいいバランスで交差しながら、それぞれの思いがわかりやすく描かれていた。

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