華山みおの物語探索 その65

『シンク・オア・スイム』青春するのに年齢は関係ない!日常に爽やかな希望を見せてくれた素敵な作品!!

 今回は、ジル・ルルーシュ監督の映画『シンク・オア・スイム』をレビューします。

 2年前からうつ病を患い、会社を退職して引きこもりがちな生活を送っているベルトラン(マチュー・アマルリック)。
 子供たちからは軽蔑され、義姉夫婦からも嫌味を言われる日々をどうにかしたいと思っていたある日、 地元の公営プールで「男子シンクロナイズド・スイミング(※)」のメンバー募集を目にする。
 途端に惹きつけられたベルトランはチーム入りを決意するが、そのメンバーは皆、 家庭・仕事・将来になにかしらの不安を抱え、ミッドライフ・クライシス真っただ中のおじさん集団だった!
 シンクロ選手のコーチ、デルフィーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)のもと、 あらゆるトラブルに見舞われながらもトレーニングに励むおじさんたち。
 そして無謀にも、世界選手権で金メダルを目指すことになるのだが・・・!?

 公開前からずーーーっと何度も予告を観ていて公開を楽しみにしていたこの『シンク・オア・スイム』。日本では男性のシンクロといえば『ウォーターボーイズ』ですよね。あれは高校生男子の青春ドラマ。こちらはそのウォーターボーイズの男子たちの倍くらいの年齢の、おっさんたちのシンクロ物語です。

 うつ病を患っていたり、奥さんと離婚・実の母から毒のような言葉を投げかけられてイライラしてたり、会社が倒産しそうだったり、万年売れないミュージシャンだったり、職場で不遇な扱いを受けていたり……と誰もが人生の半ばで躓いて、陸の上でも水の中でももがきにもがいている、さえないおじさんたち。コーチもコーチでアル中で集団カウンセリングに通い元カレにストーキング行為をしていたり、やたら口と手が出たり……。誰も何も上手くいっていません。

 体毛もじゃもじゃ、お腹はタプタプと肉体美を堪能できるものでもありません。だけどそんなのは何ひとつ関係ないです。この作品の魅力は各々がそれぞれの問題を抱えながら、一人一人が無様に、滑稽に、だけど懸命に生き、お互いを尊重し合い大会に向けて切磋琢磨する姿にあります。

 シンクロのチームなのでそこそこ人数がいるのですが、メインとなる5人のおじさんたちのバックボーンが結構駆け足で映し出されます。彼らは街のプールで趣味でやっているようなシンクロ教室の生徒たちでした。練習をして、一緒にサウナに入って、終わったらお酒を飲みに行きます。

 毎週これを繰り返していたら仲良くなりますよね。大人になって、こんな風に定期的に仕事以外で会う仲間がいること、そして彼らとはしゃぐこと、まじめに語り合う時間を持つことで、どんどんこのスイミングの時間が大切な時間になっていきます。

 小さな水泳の競技大会の前座から始まり、無謀にも世界選手権を目指すことになった彼ら。でも、練習を開始しようとしたところでコーチのデルフィーヌが練習に出てこなくなってしまいます。そんな窮地を救ったのがデルフィーヌのシンクロパートナーだったアマンダ。

 いままでデルフィーヌのやる気があるのかないのか分からないレッスンを受けていたメンバーでしたが、アマンダは彼らが音を上げるほどのスパルタコーチでした。大の大人が泣きべそをかくほどに追い込まれ、精神的にも追い詰められるが確実に技術力が上がっていきます。

 このスパルタ特訓を受けているシーンが個人的には好きでした。全員がアマンダに追い込まれて、メンバー同士の結束がかなり固くなっていくのがコミカルに描かれます。本当にしごきを受けているおじさんたちには悪いんだけど、笑っちゃうくらいアマンダが怖いんです。

 過去に事故で足を怪我し選手生命を終わらせてしまったアマンダ。そのせいでデルフィーヌともぎくしゃくすることになってしまったのですが、それでしおらしくなるような女性ではなく、心が強いままでめちゃくちゃかっこいいのです。一回キレたおじさんたちがアマンダに仕返しをするのですが、そのあとの反撃が怖いくらいに容赦がないですし(笑)

 誰よりも厳しいアマンダは、それだけシンクロが大切で、真剣に取り組んでいるからこそおじさんたちがユルユルと「世界を目指すぞー」なんて言ってるのが許せなかったんでしょうね。だから、そこに届くように厳しくしてくれたんでしょう。最後の彼らのパフォーマンスにデルフィーヌと共に興奮してる姿が素敵でした。

 世界選手権で戦うには、素人目から見ても不可能と思えました。でも、本当に最初の動きから比べたらとっても上手くなってて、必死さがスクリーン越しからも伝わってきて、展開的にはベタなのですが、それでも目頭が熱くなってしまいます。

 人生の半ば、青春とは程遠い年齢。だけどあのときの年齢よりも、いまのほうが背負うものや、悩みも複雑で逃げられなくなっている中で、心底「幸せ」を感じられることってどれくらいあるんでしょう。それが自身の努力から勝ち得たものならなおさら、どれだけ気持ちがいいでしょう。

 現代に生きてると、辛いことばっかりで未来に希望が見いだせなくなりがちです。でも、そんな日常に爽やかな希望を見せてくれた素敵な映画でした。

 あとフランス映画ってカット割りがおしゃれですよね。フランス映画だからってわけではなくて、このジル・ルルーシュ監督のカットが素敵なんですかね。今後もこの監督の作品は楽しみにしたいです。
(文=華山みお)

※現在の呼称はアーティスティックスイミング

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