昭和と平成を駆け抜けた津田広樹の回顧

薔薇族だった時代 ~ゲイが疎外されていた時代~ 第22回

2019.07.08

画像提供:津田広樹

 いつの時代も ご縁は、摩訶不思議だ。伊藤文學さんは、ゲイではないのにゲイのために薔薇族を作り続けた。NHKよるドラマ『腐女子 うっかりゲイに告る。』で、ゲイ役を熱演され高評価された谷原章介さんも、ゲイではなくノーマルな方だ。

 このおふたりのご縁は、谷原章介さんが1991年に高校を卒業されて服飾系専門学校に通われていて、まだ芸能界のお仕事に入られる前にまで遡る。当時、伊藤文學さんがオーナーだった東京・下北沢の喫茶店・イカール館 (画像は当時の店内)で、谷原章介さんがウェイターのバイトをしていらしたのだ。

 伊藤文學さんは87才の現在、全国の大勢の方に崇拝されているが、谷原章介さんも役者さんとして司会やCMに引っ張りだこだ。NHKが地上波のドラマで、ゲイのキスシーンやベッドシーンを映像に流す意味は、それだけの重要性ある真面目なゲイに悩む主人公の現状を伝えるためでもある。それが何十年もゲイが苦しんだ歴史である。それが、美輪明宏さんが平成元年の「薔薇族 創刊200号」に特別寄稿してくださった内容に繋がっていく。

 ゲイに対する偏見は、人に対してだけでなく店名にまで及んだ時代があった。それを伊藤文學さんにお聞きして愕然とした。 伊藤文學さんの「イカール館」、当初文學さんは「薔薇の小部屋」の店名にしようとなさっていらしたが、当時は”薔薇=薔薇族=ホモ”が来たら困る……と現代では、考えられない疎外感だったのだ。

 令和のいまなら「薔薇族の大部屋」の店名にしても「LGBT大歓迎」と看板に記載したとしても、何の問題にもならないと確信する。
(文=津田広樹)

【津田広樹プロフィール】
 いわゆる80年代アイドル全盛の時代にスチール撮影のみならず、その多才さを認められてグッズ等の企画発案にまでもマルチな才能を発揮したキャリアをもちながら、あらたなる新天地として当時の有力ゲイ雑誌であった薔薇族の出版会社に編集部員として転身。その後もさらにその非凡なる才能の昇華は衰えを知らず、グラビアや企画ページ等にも幅ひろく手腕をふるい、多くの絶賛を得るまでにおよぶ。そして1996年にはゲイ業界初の試みであった3D写真集付き映像ビデオ、ジャック・リードを発売し世に送り出した。
 さらにオリジナル競パン付きDVDの発売など革新を起こし続けるも、無断配信に苛まれ、昨年に全ての映像ソフトのレーベルを手離す。しかし長年ににわたり不変的な価値観を持ち続ける津田広樹の世界観は色褪せることのなく、その真価を現在も世に問い続けている。 

●津田広樹Twitter 
https://twitter.com/hk8efj4xx3zxkim

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