19ページ108円の漫画はアリ? ひそかに増えてる「分冊版」漫画とは?

■電子版の方が紙の書籍よりも売れている?「電子は紙のオマケ」からの逆転

 そもそも「分冊版」は電子書籍だから成り立つ販売形式だ。

 私は漫画ではないが、実用書を2冊過去に出版しており、それは紙、電子版双方で出ている。細かな数値は出せないが、印税率(1冊売れたら著者にいくら入るか)は紙版より電子書籍の方が「かなり」いい。

 物理的な「モノ」がない電子書籍は、紙に刷るコストが不要なので制作費をけた違いに抑えられる。さらに紙の本は作ったあとも金がかかる。書店への配本や返本の輸送費、本を倉庫で保管しておく保管料、本がまったく売れなくて最終的に裁断し廃棄するのだって、誰もタダではやってくれない。こうした費用が掛からない分、著者への還元率も高くなっているのだろう。

 買う側の立場で考えれば、コストが全然違う電子書籍と紙の書籍の値段がさほど変わらず売れられているのはおかしいと思う。しかし私は一方著者という「中の人」の立場でもあり、そうなると電子書籍が大して安くなり過ぎないことは「マンセー」であり「ごっつあん」なのだ。

「1巻だけ無料」も「分冊版」も、電子書籍だから成り立つ売り方だ。さらに紙の本は再販売価格維持制度(出版社が書籍、雑誌の定価を決め、小売書店等で定価での販売を行う制度)で定価が守られているため、値引きができないが、電子書籍は結構自由に値引きしていたりもする。

「(利用する側にとって)より便利でより安く、(提供する側にとって)より儲かる」があればそちらに人は流れていく。「電子書籍は所詮紙の書籍のオマケだ」という論調が電子書籍が出始めたころにはあったが、2019年の今、TVで電子書籍のコミックサイトのCMを見ない日はなく、そして「『不浄を拭うひと』を買ったら短すぎた!」という人がわらわら出てくるのは、電子書籍が一般的になった証ともいえる。なお、私が出した本の出版社編集部に聞いたところ、私の出した本2冊は、紙版よりも電子版の方が売れているそうだ。

 こうして思うのは、紙の本を売る書店の置かれた苦しい状況だ。現にサイゾーのある大都市渋谷おいても書店の閉店ラッシュの波は止まらず、文教堂が運営する「CAカフェ・アニメガ渋谷店」も閉店している。ちなみに渋谷のスクランブル交差点の脇にある老舗書店「大盛堂書店」は私が本を出したときにサイン会の会場を提供してくれた尊いお店なので私は今後も書店といったら大盛堂だ。

 「推し書店」のある人は、閉店の知らせを聞いたあとで「残念だ」つぶやきを一発かまして何かやった気になってる場合でない。今ここでの推し活こそが大切だ。

(文/石徹白未亜 [https://itoshiromia.com/])

◆石徹白未亜の過去記事はこちら(【おたぽる】【日刊サイゾー】)から◆

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