第21回

薔薇族だった時代 ~リアルな瞬間を捉えるのに必要なのは霊感~

2019.07.04

撮影:津田広樹

 薔薇族に掲載されていた「津田広樹のBOYS TOWN」の中に、「SPORTS SHOT」というページがあり、人気だった。私が陸上や水泳や水球やラグビーやサッカー等の旬な競技会を撮影した写真と、記事をリアルタイムに掲載していたものだ。

 今回掲載の1カットは、某大学の水泳部が競技会用の白い競泳パンツを初めて着用した競技会のものだ。OBの先輩に「透けすぎだな、その競パン」と言われて後輩の選手が「そうなんす。恥ずかしくて興奮しちゃいそうで」と会話していた瞬間だ。「後輩の競パンの股間をガン見しているヤンキー風なOBの目付きがエッチで興奮しました」と読者さんからファンレターを頂いた。

 こうしたリアルな選手の競技会でのショットはある意味、霊感みたいな波動がないと撮影できない。チャンスを逃したことも多々あった。

 例えば、あるラグビー合宿撮影でのことだ。練習試合開始前、ある選手が四つん這いでストレッチしていた仲間の選手のラグパンの穴に、フラッグをまるでゲイビデオの様に押し込もうとしていた。やられていた選手は「入ったら痛いから止めろ~」と騒いでいた。この決定的な約30秒間、私はカメラを向けられなかったのだ。

 その他にも、水球の競技会でアップしていた選手の競パンが、完全シースルーとなってしまうほど痛んでいて、中身が丸見えだったのに直ぐにロッカーに行ってしまったり、ライフセービングの東京近郊での予選会で、駐車場の水飲み場で、選手が競パンを脱いで「包皮に砂入りすぎてる~」と先輩同士が大爆笑して触りあっていたり……など、たくさんある。

 おもむろにカメラを向けて撮影したかったシーンを逃し、後悔した話を周囲にすると、「それを撮影して、選手にキレられたり問題にならずに良かったじゃないですか。津田さんの写真はそれ以上にエロチックなのがあるし・・・」と言ってくれる人がいた。そう考えると、これはこれで、幻の写真ありきで良いのかも知れない。
(文=津田広樹)

【津田広樹プロフィール】
 いわゆる80年代アイドル全盛の時代にスチール撮影のみならず、その多才さを認められてグッズ等の企画発案にまでもマルチな才能を発揮したキャリアをもちながら、あらたなる新天地として当時の有力ゲイ雑誌であった薔薇族の出版会社に編集部員として転身。その後もさらにその非凡なる才能の昇華は衰えを知らず、グラビアや企画ページ等にも幅ひろく手腕をふるい、多くの絶賛を得るまでにおよぶ。そして1996年にはゲイ業界初の試みであった3D写真集付き映像ビデオ、ジャック・リードを発売し世に送り出した。
 さらにオリジナル競パン付きDVDの発売など革新を起こし続けるも、無断配信に苛まれ、昨年に全ての映像ソフトのレーベルを手離す。しかし長年ににわたり不変的な価値観を持ち続ける津田広樹の世界観は色褪せることのなく、その真価を現在も世に問い続けている。 

●津田広樹Twitter 
https://twitter.com/hk8efj4xx3zxkim

※画像の処理は編集部によるもの

編集部オススメ記事

注目のインタビュー記事

人気記事ランキング