華山みおの物語探索 その60

『あいが、そいで、こい』青春という二度とも戻らない輝き…それを振り返った時、あなたは何を想いますか?

 今回は『カメラを止めるな!』を産み出したシネマプロジェクトの第8弾作品として作成された柴田啓佑監督初長編映画『あいが、そいで、こい』をレビューします。


 21世紀になって初めての夏―ノストラダムスの予言は外れ、世界は続き、テクロノジーは進化した。でも、僕らはただの高校生だった。
 2001年の夏、海辺の田舎町に住む高校生・萩尾亮は、同級生の学、小杉、堀田と共に高校最後の夏休みを過ごすことになった。ある日、イルカの調教師を夢見て台湾からやってきた留学生・王佳鈴(ワンジャーリン)と出逢う。イルカや海を嫌う亮はリンと対立するが、彼女の来日した本当の想いを知ったことをきっかけに心を通わせることとなる…。


 1回目はさぬき映画祭。2回目は東京シネマサロン。これは、私がこの作品を観るチャンスがあったのに、逃してしまったタイミングです。ずっと評判も聞いていたし、歯痒い思いをしていました。

 なので、本公開になるのをずっと待っていたのです。時間を指定されて、その時間に映画館に向かえば必ず映画が観られるのです。映画がそこで待っているという期待に胸を躍らせて、東京で上映されているK’scinemaに足を運びました。

 初めてでした映画館でした。受付でチケットを購入したら、一緒に梅干しをくれました。初めての体験…! 上映中に開けるとカサカサ音がしちゃうので、帰宅してからいただきました。美味しかったし、なんだか嬉しかったです。

 そんな温かみのある映画館で観た待望の『あいが、そいで、こい』も、体温が伝わってくるような青春映画でした。

 現代の仕事に追われるシーンから、過去の回想へと舞台が移ります。時代は2001年。真っ黒に日焼けした高校生男子と、真っ青な空と海が印象的です。主役の亮は、すーぐ文句ばっかり言うし、自分から謝るということを全くしないTHE・頑固男子。素直になれない感じと、すぐに「アホか!」ってチョケちゃう感じがもう、絵に描いたような高校生男子です。同級生にこういう人いたら私は絶対彼氏とかにはしたくないタイプですが、こういう男子の魅力もいまならちょっと分かります。

 彼のひと夏の思い出。甘酸っぱい記憶と、苦い記憶。それらが等身大の目線で映し出され、高校生という期間限定の肩書故の無敵さと無力さの両極端なあの感じに、じたばたしたくなりました。

 亮をはじめとした高校の仲間たちのメンツ、キャラクターがそれぞれわかりやすく、愛着も湧きやすかったです。太っちょだけど気のいい小杉。規則をきっちり守る学。亮のライバル堀田。幼馴染の由衣花。そしてヒロイン、台湾からの留学生リン。全員がその役にピッタリとはまっていて気持ちのいい好演を見せてくれました。

 その中でも特に思い入れが強く好きなキャラクターが、古川ヒロシさん演じる学だ。やんちゃな亮や小杉と3人でつるんでいますが、眼鏡と坊主のそのいでたちから想像できる通り真面目キャラです。寺の息子で「お天道様が見てる」と言われて育ったから、ルールを破ることを絶対にしません。

 車がほぼ通らないからと、赤信号でみんなが先に渡ってしまっても、自分は青になるまで絶対に渡りません。それに付き合う堀田との画が印象的です。

 誰かが困っていたり、お願いをされると断れない彼が、ルールを破るお願いをされたときに言った「ルールは破らん。ルールを変える」という台詞が、この映画の中で一番印象に残っています。自分の中にまっすぐ一本芯が通っていて、それを貫きとおすことって大人でも難しいのに、まだ色々と定まっていない高校生の彼がきちんとそれを通すことができること、それを周りの人間も認めて受け入れていること、それがとても素敵でした。

 だからこそ、映画の中での展開が悲しすぎました。その選択も学らしすぎて、でもその結果が……。

カメラを止めるな!

カメラを止めるな!

あの熱狂はいまいずこ

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