松田聖子 Legend ～ハードスケジュールで突然声が出なくなった聖子ちゃん～ 第9回

• ツイート
• 

画像提供：瑠衣羽香

　聖子ちゃんのサマーコンサートスタッフの日程表が出てきました。1981年なので、手書きという昭和間満載の、しかもコピーでございます。内部資料を見てみると、25曲くらいのセットリストになっているので、かなりのハードスケジュールだったように感じます。

　同じサンミュージックの先輩で、聖子ちゃんがお姉さんのように慕っていた桜田淳子さんのコンサートを長年制作されていたSさんが、「淳子は海外曲とオリジナル曲を合わせた構成だったけれども、聖子はニューミュージックの歌手みたくアルバム中心の構成にしたいんだよ」と仰っていたのを覚えています。ニューミュージックの歌手が、当時アルバム中心にコンサートツアーする場合は、大概アルバム発売してからリハーサルを重ね、新しい歌を身につけてから行うものです。聖子ちゃんみたく多忙なアイドル歌手がレコーディングでしか歌唱していない曲を覚え、パフォーマンスするのは至難の技だったと思います。

　その疲労が喉に出てしまった時がありました。ある地方公演にわたくしは、次の撮影の衣装の打ち合わせをかねて伺っていました。いつものように明るくて礼儀正しい聖子ちゃんと雑談していたら、サンミュージックの上層のFさんがいらっしゃって、昼の部をご覧になり「聖子、歌上手くなったな」と仰っていました。１時間ほどして夜の部が始まり、何曲か歌唱していた聖子ちゃんの声がかすれだし、普段は楽々出るきれいな高音がほとんど出なくなってしまったのです。

　心配するスタッフたちにFさんが「大丈夫、一時的にこうなる歌手はいるから」と仰いました。Fさんの通り、2日後の次の公演ではきれいな高音で歌えるように声帯が回復していた聖子ちゃんでした。

　その頃から令和元年まで、39年も現役で歌い続け毎年アリーナ公演を全国各地で満杯にして聖子ちゃんと呼ばれ続けている松田聖子は、凄すぎます。アンチ聖子的にキーを下げたとかチープなことをSNSに書き込む人たちも、松田聖子に興味を持ち続けているに違いありませんね。
（文=瑠衣羽香）