凶悪事件のカギは『ドラクエ』? 「週刊文春」は『ドラクエX』がオンラインゲームだと知らないで書いたっぽい件

2019.06.20

『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』公式サイトより

 もはや時代は変わった。風評被害なのは、ゲームではなく報道のほうじゃなかろうか。

 相次ぐ凶悪事件で『ドラクエ』の名が取りざたされて話題となっている。

 一人は大阪府吹田市で起きた拳銃強奪事件で強盗殺人未遂の疑いで逮捕された飯森裕次郎容疑者(33)。いくつかの報道では「ゲームをやめたら心臓から声が聞こえる」として警察に相談していたと報じられているのだ。

 捜査関係者が報道陣の取材に語った内容によれば、飯森容疑者は2014年11月12日に、警視庁品川署を1人で訪問。「ドラゴンクエストのゲームをやめたら心臓から声が聞こえて困っている。昔住んでいた吹田市の人たちの声です」「友達や小学校の先生、自衛隊にいたことがあるが、その時の同僚の声などが聞こえる」「心臓の中を確認してもらうことはできますか?」などと話し、対応した警察官が病院を受診することを勧めると、おとなしく帰宅したという。

 また6月1日に、元農水事務次官の熊沢英昭容疑者(76)が、息子(44)を刺殺した事件。この事件では刺殺された息子が『ドラゴンクエストⅩ 目覚めし五つの種族 オンライン』のヘビーユーザーだったことが話題になった。

 さらに今日発売の「週刊文春」(文藝春秋)2019年6月27日号では、川崎スクールバス殺人事件の岩崎隆一容疑者(51)までもが、『ドラクエ』を所持していたことを報じているのだ。当該の記事では社会部記者のコメントとして、岩崎容疑者の部屋で「ドラクエのゲームソフト」が見つかったことを取り上げ、「最近耳目を集めた三つの事件に共通するキーワードがドラクエなのです」としているのだ。

 確かに『ドラクエ』は見つかったのかもしれないが、オンラインゲームとゲームソフト。

『ドラクエX』のアクティブユーザー数は十数万人。2017年に発売されたシリーズ最新作の『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』の出荷本数はPlayStation 4が約137万本、ニンテンドー3DSが181万本、海外では約400万本……。いやいや、そんな犯罪者が発生する確率論以前の問題だ。

 過去、世間を騒がせる凶悪な事件が起こる度に、なんらかの作品が事件と関連づけられたりして報じられることは幾度もあった。04年に発生した奈良小1女児殺害事件の際の「フィギュア萌え族」。07年に京都市で、16歳の少女が警察官の父親を斧で殺害した事件に絡んでアニメ『School Days』や『ひぐらしのなく頃に解』などが放送中止になった事件など、すでに「歴史」になろうとしている事件は多い。

 とはいえ、近年はそうした報道は減る傾向にある。報道に対して、市民の側の知識が増えたことで「容疑者の家から○○が」という報道は、単にほかに書く情報が得られなかっただけということが見透かされるようになっているのである。

 ゆえに、そうした報道には怒るよりも、スルーするのが吉。そもそも「なぜ、そんな報道が?」と取材したり検証したりするのも時間の無駄と、筆者は思うようになっている。

 しかし、さすがに上記の「週刊文春」の記事は……。文章から察するに、このコメントをした人物からアンカーマンに至るまで『ドラクエ』を知らないんじゃないかとしか思えない。いや『ドラクエX』はおろか、オンラインゲームがなんなのかよく知らずに書いているようにしか読めない。

 これは、雑誌ジャーナリズムの劣化を示す現象か? いや、知らないことはちゃんと調べて書かないとマズいよなという反面教師だ。

(文=昼間たかし)

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