華山みおの物語探索 その52

『神と共に 第一章 罪と罰』死後の世界からの転生…罪に隠された家族愛…死生観の近い韓国ならではの号泣スペクタル!

2019.06.13

 韓流映画にどんなイメージを持っていますか? 私はお恥ずかしながら、あまり韓流映画を観たことがなくてイメージも何も……という感じだったのですが、今回強烈な韓流映画を観ました。

 韓国の人気WEBコミックを原作に、死んだ人間が訪れるという冥界で起きる出来事の数々を、驚愕のビジュアルで2部作として映画化したスペクタクル・アクションの前編『神と共に 第一章 罪と罰』です。

 火災現場で少女を救い、壮絶な殉死を遂げた消防士ジャホン(チャ・テヒョン)は、弁護士カンニム(ハ・ジョンウ)、護衛ヘウォンメク(チュ・ジフン)、補助弁護士ドクチュン(キム・ヒャンギ)という3人の冥界の使者に迎えられる。彼らは、人は亡者になると49日間のうちに7つの地獄で裁判を受けなくてはならず、その裁判すべてを無罪でクリアした者だけが現世に生まれ変われるというルールを伝える。ジャホンが3人の使者に導かれ、殺人、怠惰、ウソ、不義、裏切り、暴力、天倫という7つの地獄を巡るなか、実直で勤勉な正義の亡者であるはずのジャホンの意外な過去が次々と暴かれ、冥界と下界を巻き込んだ壮絶なバトルが勃発する……

 滅茶苦茶すごいスケールの映画だった……。私の持っている乏しいイメージだと、韓流映画は恋愛モノ、トレンディドラマっぽいものが多いのかなという認識でした。そして今回は、タイトル的に何か宗教めいた感じなのかな、でもすごい評価高い映画だなぁ……と、興味が湧いてきたので映画館に足を運んでみました。

 始まってすぐ、冒頭から映像がすごい。CGが駆使されたスピード感のある映像。今日の劇場4DXだったっけ? と勘違いするくらい浮遊感すごかったです。アトラクションに乗っているような感覚になるシーンが多く、体感しているような気持ちになる映像の美しさに圧倒されます。この映画、本当に4DXで観たい! 

 日本でも馴染みのある死後の世界が舞台なのですが、どの国にも“地獄”っていう概念はあるんですね。閻魔大王がいて舌が抜かれるとか、それぞれの罪によって罰が与えられるとか。小さな頃“地獄”という絵本を見て、悪いことをすると地獄に落ちてしまうんだと本気で怖がった思いが、誰にでもあるのではないでしょうか。

 本作では古今東西の“地獄”のイメージ、例えば閻魔様の裁判など、がそのまま描かれますが、そこに裁判官がつき、無罪を勝ち取れたら生まれ変われるんですよ。ただ、殺人、怠惰、ウソ、不義、裏切り、暴力、天倫という7つの地獄を巡って裁判が行われるのですが、被告側にはかなり不利です。殺人を実際に犯していなくてもダメです。本人が覚えていないような何気ない一言で誰かの自殺の引き金になったら、それが罪となってしまうのです。現代で言うと、ネットでの誹謗中傷なども当てはまるようです。まじか。怖い。

 人畜無害、むしろ善良の塊のようなジャホンの弁護は余裕かと思われていたですが、人間どこにどんな秘密が隠されているかなんて、それこそ閻魔様にしか分かりません。ひとつひとつの地獄で彼の秘密が明らかになっていくのですが、全ての罪には理由があったのです。

 ジャホンの行動の全てに家族への想いがあり、何ひとつ利己的な理由で犯した罪などありませんでした。冒頭からずっとジャホンは母に会いに行くことを望んでいました。その理由やジャホンが家族のためにしてきたことや、想いなんかがどんどん紐解かれていく展開が、大筋の地獄を巡る部分と相まって引き込まれていきます。

 彼の弟スホンの家族の物語も涙を誘われました。誤解やすれ違いが解けるのが、お互いが命を落としてからって悲しすぎませんか。

 ジャホンの使者として周りを取り囲む3人については、後編でもっと掘り下げられるのでしょうが、彼らも49名の死者を転生させることができたら、自身も転生が確約されているそうです。死者が使者になるためにはどんな方法があるのか、なぜ死者となった時点でジャホンのように裁判を受けなかったのか。まだ分からない部分も多いので、後編に期待です。

 しかし、これ前編だけでもかなーり長い! 2時間半くらいあるのですが、「え?え?」と取り残されがちに話が進むので、頑張って理解しようとしながら見るからか、体感としては3時間越えの大作を見たような感じでした。後編はクライマックスでもあるので、上映時間も長くなるかもしれません。トイレを済ませてから座席につくことをお勧めします。

 後編は6月28日より公開さます。それまでに前編を観て後編に備えましょう。後編は3人の使者がスホンについて転生を目指します。この3人それぞれの過去にも迫る展開が今から楽しみです。
(文=華山みお)

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