『インハンド』私利私欲にまみれた医者はいつ医師の志を失ったのか?高家と紐倉の名コンビが堪能できた第9話レビュー

2019.06.08

 山下智久主演サイエンス医療ミステリードラマ『インハンド』の第9話がオンエアされた。

 ある日突然、紐倉(山下智久)の研究所に高家(濱田岳)の母・良子(宮崎美子)がやって来る。高家は良子からの話で、昔から恩師として尊敬している医師・陽子(市毛良枝)が入院していることを知る。高家の地元・相羽村唯一の病院で院長を務める陽子だが、東京に出かけた時に体調を崩してそのまま入院したのだという。そしてその入院先は、高家が懲戒解雇された台田病院だった・・・。
 陽子を見舞うため、紐倉と共に台田病院を訪れる高家。陽子は原因不明の下痢や嘔吐を繰り返し、意識も不明瞭な状態が続いているというが、どういうわけかきちんとした治療が施されていなかった。しかも担当医は、高家に懲戒解雇を言い渡した黒野院長(正名僕蔵)だという。黒野が何か隠していると確信した高家は、紐倉と共に調査に乗り出す。力を借りようとフューチャージーンのCEO・福山(時任三郎)の元を訪ねた2人は、そこで福山の息子・新太(磯村勇斗)と遭遇する。
 一方で、牧野(菜々緒)が働く内閣官房サイエンス・メディカル対策室では、福山が秘密裏に進めている“ある計画”の情報を掴んでいた。牧野らが調べを進めると、福山が意外な人物と密会していることが判明し・・・。

 最終回まで今回を含めて残り3話。ラストスパートに向けて物語は動き出す。以前からどことなく怪しい雰囲気を出していた、フューチャージーンの福山との対決に向けた新章への序章となる今回は、高家が医者だったことを思い出させるエピソードだ。

 いまや紐倉と名コンビっぷりを見せている高家。愛すべき性格ゆえに誰からもいじられキャラな高家も、第1話では医者として登場していたのだ。今回は、クビになった因縁の台田病院に高家の恩師が入院したという話から始まった。

 病院を舞台にしたドラマの中の多くでは、大きな病院ほど上に立つものが不正に手を染め、本来の医者としての「病気の人を救いたい」という気持ちを忘れ、私利私欲にまみれていく様をよく目にする。医者を志したときには持っていただろう気持ちを、いつどんなタイミングで忘れてしまうのだろうか。

 高家をクビに追い込んだ黒野医師も、私利私欲にまみれた医者のひとり。悪事を高家に私的された際にも自身の権力とコネを振りかざし、高家の医師免許はく奪をちらつかせる。そこに真っ向から反撃してくれたのが、紐倉だった。

 紐倉は常々毒づいたり、高家の体に寄生虫を住みつかせようとしたりはするけれど、高家の仕事ぶりや人を救おうとする姿勢をずっと近くで見てきた。たとえ資格がなくなったとしても、黒野よりも高家のほうがより医者らしいと言い切って見せた。

 今回は冒頭から高家が紐倉をからかうなど、ふたりの名コンビっぷりが強く描かれていましたが、最後にこうやって紐倉が言ってくれるとやっぱりジーンとしますね。高家の努力が実った……。

 ツンデレ具合が半端なくて、今話の紐倉はかわいかった。いつもは高家に冷たくすると「そんなこというなよ~! お願い~!」と言ってくるのに「そうだよな」って軽く流されると「え?」って逆に紐倉が動揺するシーンが何回かあった。それがすごくかわいかった。高家よくやった。

 紐倉の助手になってから罪悪感のハードルが下がりまくった高家は、古巣の病院に忍び込むのも手慣れたもので、恩師の命を救うことに成功した。

 しかし、ひとつ事件を解決したところで新たな陰謀が見え隠れする。フューチャージーンの福山の陰謀は、紐倉たちにどのような影響を与えるのか。

 そして、紐倉と彼を取り巻くサイエンスメディカル対策室に「裏切者」が……? 最終回まであと少し。展開に目が離せない。
(文=三澤凛)

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