昭和と平成を駆け抜けた津田広樹の回顧

薔薇族だった時代 ~カミングアウトできなかった後悔と屋上での秘密の撮影~ 第11回

薔薇族だった時代 ~カミングアウトできなかった後悔と大学屋上での秘密の撮影~ 第11回の画像1撮影:津田広樹

 ライフガードの後輩が多くいた関係から、夏になると海やプールのライフガード監視所へよく差し入れに行った。そのため初対面のライフガードとも仲良くなれた。

 私もそうであるように、大概のライフガードが青春を語りたい男子なので、サーフィンの 話やオススメの映画の話、感動したミュージカルの話と話題が豊富だった。仲良くなると一晩中、飲みながら語りあかしたこともあった。

 ひとつだけ後悔しているのが、薔薇族のカラーグラビアを撮影したり企画ページを作ったりしている編集者であることを告白しなかったことだ。彼らなら絶対に理解してくれたと思う のだが、その時代は勇気がなかった。しかし最近、伊藤文學氏が毎月の文ちゃん会や講演会で「カミングアウトは、するべきではないときもあるから、必ずしもカミングアウトが正しいとは限らない」と仰っていたので、少しだけ私の後悔は薄まっている。

 私は病床だった親友の看護を独りでしている間に、建てた実家や預貯金等全てを実の弟とその嫁に奪われてしまったことがある。悲しみが多い人間ほど他人に優しくできる、という歌があるが 、私は何があっても人を裏切らない信念を持っている。だから人に信用されるのかも知れない。

 決して口数が多いわけでも口が上手いわけでもないのに、ライフガードの競パン姿の撮影をしていると、絶対に露出狂ではないライフガードが「競パン脱いじゃっていいですか?」とか「なんか全裸になりたくなったんですけど」等と言い出すことが少なくない。

薔薇族だった時代 ~カミングアウトできなかった後悔と大学屋上での秘密の撮影~ 第11回の画像2

 一度あるトラブルに巻きこまれて薔薇族編集部を去ることになったときに、編集部に返してしまったモノクロネガがあった。薔薇族のスポーツ取材で某大学のレスリング選手の撮影に行き、ひとり目のA君を合宿所のシャワー室で撮影し、A君は普通にシャワー浴びてるだけだったが、次にB君を大学の人が来ない屋上で撮影していたら、B君が「気持ち良いので全裸になって良いですか?」と言ってきた。

 私は内心、大学構内だから不安だったが「大丈夫だよ~」と返した。全裸になったB君を撮影しているとB君のモノが、グングン元気になってきたが、私は気付かぬふりで撮影を続けた。

 10分程撮影していたら隣の校舎の屋上から「おい、そこの学生!」とスーツ姿の大学関係 者が声をかけてきた。ヤバイと思った次の瞬間、その関係者の口から出た次の言葉は「他のビルから見えちゃうだろ 」と。

 えっ!?注意点そこ・・・? 命拾いした。すばらしいネガだったので伊藤文学氏にそのネガの所在をお聞きしたら、「解らないな~」と言われてしまった。
(文=津田広樹)

【津田広樹プロフィール】
 いわゆる80年代アイドル全盛の時代にスチール撮影のみならず、その多才さを認められてグッズ等の企画発案にまでもマルチな才能を発揮したキャリアをもちながら、あらたなる新天地として当時の有力ゲイ雑誌であった薔薇族の出版会社に編集部員として転身。その後もさらにその非凡なる才能の昇華は衰えを知らず、グラビアや企画ページ等にも幅ひろく手腕をふるい、多くの絶賛を得るまでにおよぶ。そして1996年にはゲイ業界初の試みであった3D写真集付き映像ビデオ、ジャック・リードを発売し世に送り出した。
 さらにオリジナル競パン付きDVDの発売など革新を起こし続けるも、昨年に全ての映像ソフ トのレーベルを手離す。しかし長年にわたり不変的な価値観を持ち続ける津田広樹の世界観は色褪せることのなく、その真価を現在も世に問い続けている。 

●津田広樹Twitter
https://twitter.com/hk8efj4xx3zxkim

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