今年の初めに公開された大ヒット映画『マスカレード・ホテル』の記憶がまだ新しい中、新しい東野圭吾原作映画が公開された。今回は『パラレルワールド・ラブストーリー』をレビューします。
脳の研究を行うバイテック社で働く幼なじみの敦賀崇史と三輪智彦は、親友でもあり互いを尊敬し合う良きライバルだ。ある日、智彦が紹介したいと連れてきた女性は、崇史が学生時代に密かに思い続けていた津野麻由子だった。そしてある朝、崇史が目を覚ますと麻由子が崇史の恋人として朝食を作っていた。麻由子が「親友の恋人」である現実と、「自分の恋人」である現実。2つの世界で崇史が翻弄されていく。
東野圭吾作品が膨大な量あると知ったとき、順番に読みたい! という思いが沸き上がりました。すでに何作か読んではいたけれど、せっかくだからとちょっとずつ順番に読み始めました。2019年現在94作品が発表されており、これまで25作ほど読了しました。
『パラレルワールド・ラブストーリー』は29作目。この作品の前後の作品を読んでいたからか、東野圭吾色がとても前に出ていると感じました。遺伝や脳、それらが引き起こすミステリー展開。SF要素がハラハラ感を演出します。
“世界が変わりまくる驚愕の108分”という広告の通り、麻由子が自分の恋人か、親友の恋人かポジションがコロコロと変わります。いま自分はどの時系列を見ているのか? それがわからなくなって混乱してきます。場面の切り替えがあえて曖昧にされているので、この時系列がどこにあてはまるのかが見えにくくなり、いつの間にか別の話が始まっているのです。
もちろん話が進むにつれその謎は解けてきます。すると現れてくるのがラブストーリー部分なのですが……。このラブストーリーが、すごく後味が悪い。主人公の崇史はパラレルワールド的な中で、自分の恋人が親友智彦の恋人となった世界戦の映像をみて思い悩むわけなのですが、別の世界線の中で取る崇史の行動が、ゲスっぽすぎて智彦が不憫でならないのです。
智彦の彼女としての世界線では、智彦は元々女っ気がなかったところにできた初彼女で、浮かれて親友に色々相談したりするわけです。そりゃ浮かれるよ! な状況なんです。そこに、いままで学校一の人気者だったイケメンの崇史が横恋慕。しかもふたりは元々運命めいたものを感じていたとかいうからね。智彦ぉ……。どこまでも智彦がいいやつだったのが救いでした。
崇史と智彦から思われる麻由子。Kis-My-Ft2の番組のキスマイBUSAIKUでメンバーの相手役の女性がずっと「マイコ」だったのがずっと頭をチラチラとしてしまったのですが、同じような方多かったのではないでしょうか(笑) お題で「親友の彼女を口説くとしたら?」みたいなのないかな……。三角関係のお題っていままであったのかな? あの番組、たまにしか見られないけど大好きです。
結構ラストにもやっと感が残っていたのですが、エンドロールで宇多田ヒカルさんの「嫉妬されるべき人生」が流れたら、なんとなく色々な部分が腑に落ちました。
この歌詞すべてが当てはまるわけではもちろんないのですが、この歌がピタッとこの物語に当てはまったというか。だから映画ってエンドロールが終わるまでが本編だ、と実感。ぜひ劇場ではエンドロールまで楽しんでください。
当時、『パラレルワールド・ラブストーリー』は映像化不可能と言われていたそうです。確かに視覚で表現をしようとすると、ネタバレやミスリードに捉えられる描写を追加せざるを得ないし、実際映像で見ることで小説特有の伏線が消えてしまっているように思う部分も見られました。
これから原作を読んだら、印象はどう変わるのでしょうか。原作が先が、映画が先か。どちらにしても、物語をぜひ楽しんでください。
(文=華山みお)
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