『煉獄女子』(室井まさね)生首が転げ落ち、内臓が飛び散る凄惨な復讐劇完結!この世で最も恐ろしいのは人の嫉妬と怨恨…

2019.05.22

煉獄女子/室井まさね

  WEBコミックガンマにて連載されていたサイコサスペンスホラー『煉獄女子』(竹書房)が完結し、最終巻が今年の2月にリリースされた。

 以前にも紹介したことがあったが、改めて『煉獄女子』のあらすじをまとめてみよう。


 都内の中学校で女子生徒が殺害される事件が起きた。生きたまま眼球をくり抜かれ、全身を切り裂かれるという、残虐かつ猟奇的な犯行だった。

 中高一貫の私立校に通い、高等部に進学した浦辺詩音は、外部入試で入学してきた瀬尾霧恵と仲良くなる。どこか陰を感じさせる霧恵は、事件の被害者と同じ中学の出身だった。

 そして、詩音の周囲では不可解な事故が頻発しはじめる――。


 『煉獄女子』には様々な社会問題が描かれている。学校でのイジメ、母子家庭、貧困、不倫……。本作はそういった問題で人生が狂い、嫉妬した人間の復讐劇だ。

 本作のキーとなる瀬尾霧恵。彼女は外見が美しい上に、優秀だ。芯のある性格をしていて、カリスマ性もある。平凡な人からすれば、全くつけ入るスキのない“パーフェクト・ヒューマン”である。しかし、パーフェクト・ヒューマンであるからこそ不気味だ。完璧素すぎると、人は人間味を失ってしまうのだ。

 本作のヒロイン・浦辺詩音は瀬尾霧恵と仲良くなりながらも、彼女に少しずつ少しずつ違和感を覚える。しかし、詩音は彼女自身の純粋さからその違和感に目をつぶっていく。それがあだとなり、犠牲者が少しずつ増えていってしまう。

 最終巻ではついに詩音の両親を巻き込んだ惨劇が起きてしまう。刃物が深々と腹部に刺さり、生首が転げ落ち、人が焼け焦げ、ベットリとした血のりが辺りに死臭を漂わせる。

 最終的な謎と伏線が全て回収され、エンディングへとジェットコースターのように突き進むのだが、とにかくグロい。怨恨とは人をここまで鬼にするのか、と思えるほどだ。しかし、そこまで人を鬼にした裏の心情を思うと、胸が苦しくなる。

 人は何をきかっけに幸福となり、不幸となるか。恵まれた環境で育つか、そうでないか。ほとんどボタンの掛け違い程度の差でしかないこともある。人生で「if」は考えても意味がないものの、どうしても「if」を想像してしまう。本作はあくまでもエンターテイメントを意識したフィクションであり、ホラーマンガであるものの、現実の残酷さをまざまざと見せつける。

 嫉妬と怨恨のなれの果てがどうなるのか。ぜひとも最後まで見届けてほしい。
(文=Leoneko)

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