七瀬さくらインタヴュー

『<推し>が最高に尊くなる ツーショットチェキポーズHANDBOOK』 七瀬さくら〜運命づけられた独歩行

「今のお仕事、向いてないかなとも思ってます。コスプレもたくさんやって、本もグラビアも出てるけれど、自分はなんなんだろう、何者なんだろうと思ってる。なんでも屋さんなのかなあとか思っています」

 かつて、友達に誘われて、冬のコミケで初めてのコスプレをした時から、カメラのレンズを向けられるのは慣れていた。父親は幼い頃から娘を撮影するのが大好きで、写真一枚にもこだわっていた。家族でスキーに出かけても七瀬を撮影する時にはストックの立て方やなにやらを細かく指示するのだ。

 そんな慣れが独特のオーラを放っていたのか。男装コスばかりしていたのに、カメラマンサークルから声をかけられた。彼らのほうも七瀬の胸が大きいことには気づいておらず、いざ撮影の時になって随分と驚かれた。

「本当はメイク、苦手なんですよね。なのに、いざ始めるととことんやる性分なので、リップも今は100本くらい持っているんです。でも、オフの時にはメイクするのやっぱり面倒臭いって思っちゃいます。カラコンも目が疲れるし、本質的にはコスプレイヤー向いてないですよね」

 そんな率直な言葉を吐く七瀬には、同時に魅力を感じる人も多かった。「自分はコスプレイヤーなんだから、こう」と限界値を設定したりすることはない。ただ、興味を覚えたものはなんにでも挑戦したくなる。だから、ROMからオムニバス写真集にと仕事の枠は広がっていった。コスプレイヤーとしては「らしくない」態度が逆に信頼を勝ち得たというわけである。

「この業界で人を信用したら、死ぬ」とまで、七瀬はいう。今回の本が話題になって様々な人が近寄ってくるが、それに心が踊ったりはしない。極めて冷静だ。人嫌いだったり悲観的だっりするのではない。八方美人をしたり愛想を振りまいたりするのではなく、最初から魂をぶつけあえる人間しか相手にしない意志の強さがあるのだ。今回の本へと導いてくれ玉響は、そんな魂がぶつかりあった数少ない相手だ。

「本人に知り合ってから長いこと、あなたのことを全然信じてなかった……といったことがあるんです。そうしたら“知ってた、信頼を勝ち取るまで推そうと思った”と言うんです」

 それでも友情に甘えてはいない。こういったあと、ポツリと「ほんとかなあ……」と自分に問いかけるように呟いたのである。一方で、こんなこともいう。

「ファンは信じている。だって、交通費とか使ってきてくれるんだから……」

 そうしたファンに対しても甘えてはいない。「自分がもっと可愛ければよかった、有名だったらよかった」。常に現状に満足するのではなく、より先の未来を見て七瀬は生きている。

※※※

 昨年の十二月の発売以来『<推し>が最高に尊くなる ツーショットチェキポーズHANDBOOK』は順調に版を重ねている。生臭い話をすると、撮影される側にとってチェキの収入は魅力的だ。会場がライブハウスだったりすると、ドリンクのバックはおおむね300円。チェキの場合は自分でフィルムを用意したとしても500円はバックが入る。この200円の差は魅力的だ。

「だから、撮られる側には、この本を言い訳に使ってもらいたいな」と、七瀬は言う。単純計算すると、掲載されたすべてのポーズを一つずつ撮影していくと、全部を取り終えるのに一枚1000円として10万円。この収入は大きい。中には七瀬の本を利用して「この本のを全部撮るまで、推し変できません」としているアイドルもいるという。ファンの側も、それを楽しんでいて撮ったページに×をつけたり、さらに、ポケットを貼り付けて、終わったページにチェキを入れている人もいる。

『推しが最高に尊くなる ツーショットチェキポーズHANDBOOK』 七瀬さくら〜運命づけられた独歩行の画像4

「オタクはコンプリートしてくれて、女の子にもお金が入りますよね。これは俺が考えたポーズじゃないけど、本に書いてあるからしょうがなく……って、できるし女の子も本があるからしようがなく、コレ全部撮ってよとか……作った時は、そこまでは考えていなかったんですけど、これは、ウィンウィンになれるものかな……」

 七瀬の言葉のはしばしから感じるのは、自身が演じるよりも、自分のアイデアが世に広まり、思いも寄らぬ方向へと転がることの楽しさである。事実、プロデュースをすることへの意欲も高い。様々なグッズのアイデアも、今では自腹を切って実現している。人に頼るのではなく、自分でやることが、七瀬にとっては当たり前のこと。

 一応「コスプレイヤー」ということにはなっているが、それは仮初めの現在でしかない。

「自分はなんなんだろうと思ってる。何でも屋さんなのかなあとか思っています……」

 でも、そうして際限なく活動の枠を拡げている今は、常に楽しい。

「みんな人間ですからね……みんな、人生があって、裏側があったり。手厳しい言葉は吐くけれど、実は誕生日にサプライズされたら喜んじゃう人かも知れないし」

 常に一所に安住できないのは生まれ持った宿命かも知れない。けれども、充実した人生だけは約束されているはず。ああ、取材に出かけることを決めた、ひっかかりはこれだったのか。そのことが『<推し>が最高に尊くなる ツーショットチェキポーズHANDBOOK』のページのはしばしからにじみ出ていたのか。

(取材・文/昼間たかし)

『推しが最高に尊くなる ツーショットチェキポーズHANDBOOK』 七瀬さくら〜運命づけられた独歩行の画像5

『<推し>が最高に尊くなる ツーショットチェキポーズHANDBOOK』(マイウェイ出版)
著:七瀬さくら

『<推し>が最高に尊くなる ツーショットチェキポーズHANDBOOK』 七瀬さくら〜運命づけられた独歩行のページです。おたぽるは、インタビューアイドルアイドル&声優の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!