七瀬さくらインタヴュー

『<推し>が最高に尊くなる ツーショットチェキポーズHANDBOOK』 七瀬さくら〜運命づけられた独歩行

 コスプレイヤーを軸として、世の荒波を渡っている七瀬は一種「女」を売り物としている仕事なのに、なよなよした女性らしさはなかった。よく聞こえるようにはきはきと、滑舌のよい言葉を話す。企業の女社長だとかビジネスで世を渡っている女性のような印象だった。そんな七瀬に、冒頭の質問をぶつけたのは彼女が、楽しそうに本に寄せられた感想とか、想いを語った後だった。

 一瞬、たじろいだ後に七瀬はすぐに言葉を続けた。

「え……それ、いいですかアカウント見せてもらって……。いや、ブロックしていないですけど、されているんだったら、しているんですよね。え、全然わかんない。ぜんぜんブロックいたことを覚えていない……ホントだブロックしてる……。いや、すいません、大変失礼しました」

 ぼくのスマホの画面をみると、七瀬はすぐに自分のスマホを取り出してブロックを解除した。それから、一息ついて話を続けた。

 ブロックされていた理由はわからなかった。ただその後の話の中でTwitterの使い方やファンへの対応で思い悩むことはあることを、幾度も語った。だから、そんなことはどうでもよくなった。好き嫌いに関わらず、七瀬のような活動をしていると日々の活動の告知にTwitterは欠かせない。毎日アクセスすれば、見るに耐えないような言葉も見つかる。でも、それはそれだけ、彼女の活動が輝いていることの証左だと思った。

 この日の取材の本題である『<推し>が最高に尊くなる ツーショットチェキポーズHANDBOOK』も、もとは彼女の個人的な活動だった。

『推しが最高に尊くなる ツーショットチェキポーズHANDBOOK』 七瀬さくら〜運命づけられた独歩行の画像2

 最初は、コミックマーケットで出したB5サイズの同人誌だった。その同人誌を出すことになるまでも、出会いがあった。

「本でモデルもやってくれている玉響桃乃ちゃんと定期的にイベントをやってくれている時期があったんです。ものすごくチェキの出るイベントで、お客さんに中には一度に50枚とか撮ったりする人もいるんですよね。そうなると、時間もないしポーズが一定化してくるんですよね。その時、誰かがチェキのポーズ本とか、出してくれたら、こんなに困ることはないしと思いつきで言ったら、ファンのみんなが言い出しっぺの法則みたいな空気になって……じゃあ、次のコミケで出します……というわけなんです」

 イベントでチェキを撮影するという文化は、アイドル特有のものでコスプレイヤーにはないものである。チェキ一枚の相場は概ね1000円。一枚につき、撮影している1〜2分をアイドルと話ができるわけである。コスプレイヤーのファンは、マンガ・アニメ好きも兼ねている場合が多いのでチェキに1000円出すんだったら同人誌なりマンガなりを買えるじゃないかと考えるほうが多い。だから、七瀬には多くの人が何枚もチェキを撮影する行為がこの上なく新鮮だった。

「それに……アイドルファンはノリノリだけどコスプレイヤーのファンは引っ込み思案な人も多いんですよね」

 そんな中でポーズの本があればいいと口走るまで引き寄せられたのには、もう一つきっかけがあった。七瀬自身、イベントに出演することも多く、チェキが撮影できるイベントに参加することもあったがあまりファンが行列することはなかった。なのに、チェキに魅せられる出会いがあった。

『推しが最高に尊くなる ツーショットチェキポーズHANDBOOK』 七瀬さくら〜運命づけられた独歩行の画像3

 2015年8月、七瀬は仕事の依頼を受けて「東京アイドルフェスティバル2015」に出向いた。仕事先はゲーム『ファントム オブ キル』のブース。当時、その作品はアイドルグループ「でんぱ組.inc」とコラボしていた。人気グループが参加するだけあって、ブースは盛況だった。群がる「でんぱ組.inc」のファンの中には、七瀬のTwitterをフォローして、いつもコメントを寄せてくれる顔見知りのファンもいた。

「その人たちがアイドルの方々とたくさんチェキを撮っているのを見て、楽しそうだなと思って。そう、チェキだったら持って帰れるし、推しとたくさんお話しできていいなあと思ってたら、感染したというか……」

 アイドルファンとコスプレイヤーのファンが同じ場所にいる。どちらか片方だけではなく両方のファンの人もいる。双方はお互いにリスペクトしているように見えた。なにより七瀬の目には、コスプレイヤーのファンは持って帰られるその日の記録であるチェキは、素敵なものだと見ている風に映った。

「そう……物販の中で持って帰られるオンリーワンのものはチェキや写メくらいのものだし……それなら、1000円は安いのかもと思ったんです。撮影会で同じ時間撮影するのとは、違うし」

 それでも1000円は高いかもと思った。すぐにそんなことを考えるのは止めた。自身も、推しのためとかオンリーワンの素敵なものを手に入れるためには、少しばかり高いお金を払っても構わないと思っているからだ。

「子供の時に『神風怪盗ジャンヌ』が好きで作者の種村有菜さんをずっと推しているんですが、原画のために6万とか8万円とか出すのも私は惜しいとは思いません。それに、例えば、自分の名刺でもいいデザインのためには数万円のデザイン料を払っても惜しくないと思っています」

 でも、七瀬にはそうではない肝の太さがあった。だから、コミックマーケットで頒布したチェキ同人誌はすぐに話題になった。その肝の太い魅力に惹かれるのは男だけではない。男は、今までにないチェキのポーズを指南する同人誌をとりあえず褒めて「これ、商業出版したほうがいいよ」と言うくらいだった。でも、玉響桃乃はそうではなく、なんの伝手もない七瀬にかわって出版社に電話をして、すぐに話をまとめてきた。

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