「LGBT? 性別の壁なんて本当に些細なものなんだね」 令和のはじまりと共に開幕した新たな世界

 はたまた「バ美肉」すなわちバーチャル美少女受肉という新語も生まれているように、美少女となって楽しんでいる人もいる。海外のエロサイトにアクセスすると、VRのアバター同士でエロいことを楽しんでいる動画をアップしている人もいる。それらが、もう当たり前のこととして受け入れられている。変態でも倒錯でもなくである。

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 この現象は技術が発展したことによる「進化」と思った。ぼくが知っているのは、ダイヤルアップ接続だった時代からだけど、その頃から「イメチャ」とか「なりチャ」と呼ばれる文化はあった。既存なりオリジナルのキャラクターになりきって話をしたり、文章を交わしてセックスをする。相手の性別などわからない。女を演じているけれども、中身はオッサンなんて当たり前。

 でも、それを気にする人は少数派。むしろ、淫猥な文章でお互いに興奮した後に「射精しました」とか書かれると深い満足感を得るという人にも何人も出会った。現実の身体が同性愛者でもないのに、である。

 やがてネットが普及した頃に『Second Life』のブームがあった。一時は、一財産を築いた人がいるとか、多くの企業が仮想空間で商品が買える店舗を設けて話題になったものである。

 そのブームが一段落した頃に、ふと「イメチャ」とか「なりチャ」のサイトをめぐっていると「『Second Life』に興味はありません?」という人に出会った。今となっては彼か彼女かわからないその人が、どうしてそういってきたのかはわからない。ともあれ、様々な「自作」もしているらしい、その人は懇切丁寧に教えてくれた。ぼくが満足いく蠱惑的なふたなりのアバターができるまで何日も。

 一瞬の流行とは別に『Second Life』は、驚きの世界だった。文字や絵で表現するとは別のなりたいものになる行為が当たり前に行われていた。日常の性別を越えるのは、ごく当たり前に行われていた。

 まだ大半の人が所有しているパソコンのスペックが追いつかなかったのか『Second Life』は決して普及はしなかった。でも、それから十年あまりの間に性別の壁というものは極めて些末なものになったように思える。とりわけ興味深いのは、サブカルチャーのジャンルでTSF(TransSexual Fiction)や男の娘を描く人が増えたことである。

 TSFは、女体化……すなわち、男が様々な理由で女の身体になってしまうこと。男の娘は、いわば女装。ただ、その一言で表現できないくらいに表現の幅は広い。とりわけエロマンガのジャンルでは、作品数は増え愛読する人も増えた。エロマンガの読者の大多数は男性である。普段は異性愛者だという人も、そうした作品を読んで興奮しているのである。

 昨年『新潮45』に掲載されたLGBTを扱った特集「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」が「当事者」を名乗る人たちから苛烈な抗議を受けたことは、まだ記憶されていると思う。主たる抗議の対象は同誌に掲載された小川栄太郎の寄稿だったが、同時に掲載されていた元参議院議員の松浦大悟の文章への非難も苛烈だった。

 十年来の友人である松浦の利権化した運動への批判を記した文章を読んで、ぼくは選挙で落選してから苦行を強いられていた友人の復活への安堵と痛快さとを感じていた。そんなぼくにとっては嬉しい寄稿を非難して、挙げ句には出版社の周りを取り囲むような抗議まで行う人々には違和感しかなかった。彼らは自分の主張する性を拠り所にして社会にそれを認めさせること。究極的には、支配のシステムである国家による法制度に組み込むことを求める。そうした主張に疑問を提示する者には「差別者」だとか「レイシスト」というレッテルが貼られる。

 それはあまりにも周回遅れのように見えた。TSFや男の娘というジャンルが当たり前のように作品として受容されている。現実世界でも、男の娘として生きている人には何人も出会った。男の娘になるのは、年齢だとかハードルが高かった。でも技術の発展により仮想の現実を用いれば、少しの投資と学習とで性別の壁を飛び越えることができる。ぼくの場合は、男だから女だけど、その逆も存在することはわかっている。

 もし「VRの技術が発展しようが、あくまで仮想にすぎない」と思っているならば、一度試してみるとよい。「イメチャ」とか「なりチャ」でも自分の普段の性別とは逆のものを演じていると、自分の中の性はひとつではないことに気づくはずだろう。次第に一般化していくメディアやVR技術などが巨大なマグマとなって噴火し、世の中がガラリと変わる日は決して遠くはない。

 だから、その取材に手をつけなくてはならないと思った。最先端だとかクールとは別のベクトルで。ただひたすらに「楽しい」とか「そうしたくてたまらない」という熱情に近づくために。そのために、まずぼくは『カスタムメイド』に手をつけた。なぜ『VRchat』ではなくて、こちらから始めたか。

 理由は単純である昨年、ぼくの記事をTwitterで褒めてくれる人がいた。その人が『Second Life』で幾度も交流をしていた人だった。今は『カスタムメイド』を楽しんでいるというその人に色々と魅力を教えてもらったのだが、決定打は「女性視点もできる」といわれたことだった。

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 パソコンとHTC Vineは令和元年のはじまりと共に届いた。そこから丸一日半。3時間くらいしか寝ずに楽しんでいる。ひとまずは慣れるためにあれこれと弄っているのだが、自分がエディットしたメイドが喘ぐ姿をVRで体験すると「自分がメイドの側になったらどうなるのだろう」と、ワクワク感は止まらず、まったく眠くならない。
(文=昼間たかし)

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