インタビュー&ルポルタージュ

元AKB48グループメンバー・北原里英インタビュー 「わたしの演技で観客を裏切らなきゃいけない」 女子の闇深き呪い『映画 としまえん』

 この辺りで、話題を現代へと戻したい。

 先ごろ、阿佐田哲也の小説を原案とした映画『麻雀放浪記2020』を鑑賞した。1984年に公開された映画『麻雀放浪記』は東映と角川春樹事務所の製作で、イラストレーターの和田誠が監督と共同脚本を担当した傑作映画だった。

 主人公の坊や哲には当時人気絶頂のアクションスター・真田広之が抜擢され、破滅型アウトローのドサ健を鹿賀丈史、老獪な出目徳を名バイプレイヤーの高品格が見事な存在感で演じていた。

 そんな題材を『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』『孤狼の血』で観客たちの度肝を抜き、問題作を連打する白石和彌がリメイクしたと知って劇場へと急いだ。

 ところが東映伝統の低俗極まりない描写に不良性感度が刺激され、コンプライアンス社会の空気に逆行するかのような男性目線の演出に興奮を憶えずにはいられなかった。世のしがらみや常識から、一時でも観客を解放してやらなければという確固たる東映の信念が全編から漂っていた。まさに、停滞する生命力を呼び覚まそうと多難なテーマに挑んだ白石和彌監督、坊や哲を演じた斎藤工、そして配給の東映に惜しみない拍手を贈りたいと思った。

 かつて出演するラジオ番組で主演映画の方向性を探った北原里英は、白石和彌の監督作『凶悪』を挙げて出演を熱望した。本年の年明けから、テレビ東京系の連続ドラマ『フルーツ宅配便』を視聴していた筆者は、眼鏡をかけたおさげ髪の地味なデリヘル嬢・レモンを、個性的かつ繊細に演じた若手女優の存在がとても印象に残った。

 そんな、ほかのデリヘル嬢とは明らかに違ったオーラを放つ女優が気になってクレジットを確かめたところ、何と『サニー/32』の北原里英だと知って驚かされてしまった。そして、そのドラマシリーズのメイン監督こそが白石和彌だったのだ。

 女優という存在は気鋭の演出家や個性的な共演者との出会いによって、その演技力が劇的に進化していくものなのだと改めて感心させられた。インタビューの際、筆者は映画『パーフェクト・レボリューション』の関係者であることや、主演俳優との関係性を簡潔に伝えていた。それは北原里英がリリー・フランキーと共演した際に、一体どのような影響を受けていたのかを聴かせてほしかったからだ。

――― 90年代後半より、筆者はトークライブハウス・ロフトプラスワンの企画プロデューサーの一人として、トークライブを手掛けていた。オープン当初から店には雑多な文化人が出演しており、イラストレーター兼コラムニストとして活動していたリリー・フランキーもその中の一人だった。

 その後、自身のサブカル系企画『スナック・リリー』が起爆剤となってその知名度はさらに上昇、数多くの『スナック・リリー』信奉者が生まれていった。ロフトプラスワンのアイコンとも呼ぶべき東京タワーをモチーフにしたカラフルなステージ画は、数多のお客さんやロフトの関係者が見守る中で、リリー・フランキーが夜を徹して描いてくれたものだった。

 筆者もリリー・フランキーのトークや著作から様々な影響を受けるようになっていったが、日頃から出演者に対して手厳しい評価をするロフトの名物オーナー・平野悠も、「リリーさんのトークセンスは素晴らしい。すぐにブレイクするだろうな」と早々に予見していた姿が懐かしい。以降、リリー・フランキーは長編小説を上梓してベストセラー作家となり、主演映画がカンヌ映画祭でパルムドールを受賞するという快挙を続々と成し遂げていく。

 そんな渦中、ロフトプラスワンを通じて接してきたリリー・フランキーとの縁が、2015年の冬に再びつながった。

 その数年前、映画『まだ、人間』を完成させ、劇場公開を決めたばかりの松本准平から同作の宣伝プロデューサーを依頼された。当時、東映系の配給会社にデスクを置いていた松本准平は、一方で新作映画の企画開発にも携わっていたが、監督作の宣伝期間と重なってしまい捗ってはいなかった。そのような関係から筆者も頻繁に配給会社の応接室で宣伝の会議を重ねていたのだが、徐々に企画開発についての打合せも行うようになっていった。

 また、松本准平という映画監督に興味を抱き、同じように東京大学の大学院を卒業した経歴を持つルポライターの昼間たかしも、『まだ、人間』の宣伝記事を掲載していた関係から企画開発の打合せに参加していた。

 そしてある時、四肢の痙性麻痺から電動車椅子での生活を余儀なくされている友人の熊篠慶彦から、自らの半生を映画化したいと度々相談を受けていたことを思い出した。数日後、事前に企画案を伝えておいた昼間たかしが、電動車椅子に乗った熊篠慶彦を連れて配給会社の応接室に現れた。

 身体障害者の応対に不慣れな松本准平の戸惑いが昨日のことのように思い出されるが、後に筆者の企画案が実を結んで松本准平と熊篠慶彦の二人は意気投合。翌年、松本准平はその配給会社を退職するのだが、電動車椅子に乗った身体障害者のラブストーリーを映画化すべく地道な取材活動を重ねていく。

 程なくして、熊篠慶彦を取り巻く人間関係に大胆なフィクションが加えられた脚本が完成し、制作プロダクションの東北新社から武井哲プロデューサーが参入したことによって、映画化へと走りだしていった。

 そして、完成した『パーフェクト・レボリューション』の脚本はロフトプラスワンとの密接な関係性や、熊篠慶彦との長年にわたる交流から、リリー・フランキーのもとへ2015年の冬に届けられたのだった。本作は企画された当初より、監督・脚本の松本准平、原案者の熊篠慶彦、そして筆者も交えて主人公のクマ役には、リリー・フランキーを想定していた。

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