物語探索その38

『あの日々の話』誰しもが経験しただろう空気や感情…カラオケルームがで垣間見れるあの日々に何を思う!?

 好きな役者さんが出ている、というのでそれだけの前情報で観に行った映画『あの日々の話』をレビューします。

 とある大学のあるサークル、代表選挙が行われた日の二次会のカラオケボックス。当初和やかに進んでいた会が、思わぬきっかけから若者たちの裏切りと騙し合いの泥沼に発展する。大学デビューをした若者たちの、滑稽で無様な青春群像劇。

 オールをした朝に店を出る時の「なんて無駄なことをしたんだ…」という徒労感と、いつも通りの日常に戻っていく少しの諦めを伴った爽やかさを描き出す。

 監督の主宰する劇団・玉田企画による同名舞台原作を完全映画化。

 今作では舞台版キャストに加えて、太賀と村上虹郎をゲストに迎えている。

 この映画、関東で現在2か所しか上映していないんです。本当にもったいないと思います。それくらい面白い映画でした。

 ただ、開始30分くらいまではちょっとつまらなかったです。でもそれはあの『カメラを止めるな!』でもそうでした。その後ぐっと面白くなります。

 面白くなったのは、女子だけのシーンが始まってから。その前の男子だけのシーンは後々大事になってくるんですが、最初はただダラダラしているのを見せられているだけに感じたり、出演者が大学生に見えなくて「???」となっていました。

 この映画は、もともとは舞台作品であり、そのオリジナルキャストでの映画化だということで、大学生に見えない人が多いのも納得です。

 さて、女子のシーン。これは私が女性だから共感というか、だあるあるを感じたのだろうか? 1人の女子を呼び出して、OGと先輩が、その場にいない女子についてあれこれものを言うのですが、

「だってさー、ほら、あの子ってアレじゃない」
「アレですよねー。」
「ああいう子ってアレだからそんな感じだもんね」

こういう主語を使わないで雰囲気で伝えてこようとするんです。直接的な言葉を言って「悪口を言った」という事実を作らないためのずるい手法。同意しないと「あ、あなたってそういうタイプ?」ってこっちが悪いみたいな物言いをする。すごい、OGの洋子先輩役の森岡望さんの演技力によるものだと思うのですが、まぁイラつく。本当にイラつく。

 それを受ける長井短さん演じる1年女子、文ちゃん。この糾弾はおかしいし何を言っているかわからないとちゃんと相手に伝えるの素晴らしい。言い方もすごいよかった。あのシーンで文ちゃんが言い返してくれるのマジですっきりした。間に挟まれる高田郁恵さん演じる沙織もホワっとした雰囲気ながら、シーンによってはちょっと面倒くさい匂いがしてて、「どこの団体にもこういう奴いる!!」と膝を打ちたくなった。

 本当に過不足なく、どの団体にもいる! というメンバーが集まって、どの団体でも起こりそうなトラブルを見せてくれる。

 男子メンバーも、下っ端1年生、偉そうな先輩、悪乗りしちゃう奴、偉そうなOG、社会人学生が「男子って本当にバカ」という姿を見せてくれる。

 個人的に好きだったのが、ずっと偉そうな先輩に説教ばかりされていた前原瑞樹演じる1年生・石川がとあるカミングアウトをきっかけに態度がコロっとかわったところ。男子にとってやっぱりそれによって優劣つくんだ……。というくらいに立場が変わるシーンが面白かったです。

 あとで大ごとになっていく「ヤレるか否か」。男子たちはヤレると思いこんでいるのがもう見てて痛々しく、でもその馬鹿さが愛しくなる不思議。オマエ誰にする? どこでする? と詳細に男同士で取り決めを交わしていく姿もただただ滑稽だ。気付いてー! ないよー!

 男子の、男子同士の仲だけで盛り上がり実際には何ひとつ上手くいかないときのあのシュンとした感じ。あるよね。借りてきた猫みたいになって怒れる女子たちの前に並ぶ姿。そして逆切れする細川先輩。

 「そういうノリなんやから」って言えばいいわけじゃないんだよ! っていうか、ノリだからいいってなんだよ! ここにいる男子みんなが絶対モテなさそうだったけど、誰よりもないなと思ったのがこの細川先輩でした。

 でもこうやってイラっとさせられるのは、脚本と演出と芝居が的確だからなんでしょうね。思った通りに感情が長されて、メンバーが解散する際に感じた倦怠感を感じながら映画が終わりました。

 いつかどこかで誰もが一度は感じたことがあるであろう空気。世界の縮図は小さなカラオケルームで繰り返されます。教訓なんかないかもしれません。ただ、あの日々の話を眺めただけ。

 「懐かしい」「そんなこともあったね」「思い出したくもない」「戻りたい」どんな感情を抱くのか、それは劇場で確かめてみてほしいです。

 ちなみに冒頭に書いた好きな役者さんは文ちゃん役の長井短さん。今年の3月いっぱいで惜しまれて終了したラジオ『根本宗子と長井短のオールナイトニッポン0』のパーソナリティで存在を知って、大好きになった役者さん。お芝居もとっても好きなのです。

 今回の文ちゃん役、とっても素敵でした。気になる方はぜひ、この映画を観てほしいです。そしてこの素敵な映画がもっと多くのスクリーンで上映されることを願っています。
(文=華山みお)

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