夕張市石炭博物館が本物の石炭まで燃える災難 本物の坑道火災まで再現しなくても……

2019.05.01

夕張市石炭博物館公式サイトより

 今どき坑内火災なんて! 先日、鉄道が廃止されたばかりの北海道夕張市で珍しい火災が起こり話題となった。

 火災の現場となったのは、夕張市にある夕張市石炭博物館。この博物館は夕張炭鉱の坑道も利用したかつての夕張市の繁栄を知ることのできる施設。かつての坑道を利用することで採炭に利用していた機械が動く様子をみることのできる非常に貴重な施設である。

 ただ、貴重な施設でありながら、ここ十数年にわたって運営は困難を極めてきた。なにしろ、所在地は北海道夕張市。しかも、市街地からも極めて離れたところにある。筆者が最初に訪れたのは2005年のゆうばりファンタスティック映画祭の会期中だったが、夕張市がもっとも賑わうイベントの最中だというのに、ほかに客は誰もいなかった。

 その後、夕張市の破綻に伴い2006年10月からは長期にわたって休館。その後再開されるも、老朽化によって2015年に再び閉館。2018年4月になり、ようやく再開となっていた。

 今回の火事の原因は明らかになっていないが、火災の現場となったのは本物の坑道。ようは、石炭に火がついて燃えたのである。石炭には一度火がつくと容易に消えることはない。何十年にもわたって石炭が燃え続けている事例は世界にいくつもある。夕張市内でも神通坑と呼ばれる坑道は1913年以来、いまだに燃え続けていて、その周辺にだけ冬になっても雪が積もらない熱気がこもっている。

 実際に鎮火をしようとすると坑道から流し込んだ水で完全に水没させてしまうくらいしか方法はないもの。今回も、その方法でようやく鎮火が報じられている。

 再開してようやく一年目にして、まさかの災難に遭ってしまった博物館。夕張市ではふるさと納税を用いて再建に着手する考えを示している。日本でもまたとない貴重な展示をする博物館。不謹慎ながら、実際に坑道が火災になった現場ということで、さらに貴重な資料となったといえなくもない。

 ひとまずはたずねて応援。再開の暁には、是非とも行ってみたい博物館だ。

(文=昼間 たかし) 

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