『子連れ狼』の原作・小池一夫さん死去 『北斗の拳』『ドラクエ』に影響を与えたキャラクター作りの極意

2019.04.19

『子連れ狼』で知られる漫画原作者・小池一夫さんが、肺炎により82歳で亡くなった。つい先日の『ルパン三世』のモンキー・パンチさんの訃報の際には、Twitterで追悼コメントを出したばかりだった。突然の訃報に驚きと悲しみの声が寄せられている。

「キャラクター原論」の提唱し、『キャラクターはこう動かす!』(小池書院)といったキャラ作りを教える書籍でも知られる小池さん。漫画において、“キャラクターを立てるこそ大事”という考えは、『うる星やつら』の高橋留美子や『北斗の拳』の原哲夫をはじめ、多くの漫画家に影響を与えたと言われている。

 今回は小池さんのキャラ作りの極意を知ることができた、2014年放送の『探検バクモン』(NHK)の記事を再掲したい。

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 9月3日放送の『探検バクモン』(NHK)に、マンガ原作者・小池一夫が登場。『子連れ狼』『オークション・ハウス』といったヒット作の原作者であり、『うる星やつら』の高橋留美子や『北斗の拳』原哲夫、『グラップラー刃牙』の板垣恵介といった弟子を持つ日本マンガ界の重鎮に、お笑い芸人・爆笑問題の二人がマンガ原作について学んだ。

  番組では、小池が講師を務める大阪の専門学校を訪問。学校内には、小池のこれまでの作品などを展示しており、小池の原作も今回特別に公開された。

 その原作には小池のこだわりが随所に見られ、まずマンガの場面を描く時には、映画のカメラワークを意識しているという。実際に見せられた原画には「(子連れ狼)の大五郎の大アップから画面は東屋の中にカメラパン(カメラを振る)して……」と書かれていた。

 また、小池はマンガの文字にもこだわりがあるようで、担当編集に対し「語りは吹き出しなしで18級【編注:文字の大きさのこと】くらいで組んください」と、詳細な指示を出していた。そして、セリフの中に“カタカナ”が入るのが小池流だという。実際に作品を見てみると、「近くで見てたンで」と“ん”が“ン”になっている。小池曰く、ひらがなだと“読んで”しまうが、カタカナだと“飲んで”しまうから読みやすくなるのだとか。そのほかにも、代名詞の横には点をふるといったものも見られ、これらのことはすべて読者にとって読みやすくするためにしていることだと語った。番組もそれにならってか、テロップの“ん”が“ン”に変わっていた。

 一方、小池はこれまでに「キャラクターはこう動かす!」(小池書院)などといった“キャラクター”作りを教える書籍を発行しているが、番組でもそのキャラクターへのこだわりが見られた。

 小池は、「キャラクターを起(た)てろ」と、キャラが起っていれば、おのずとストーリーが生まれてくるということを弟子たちに教えてきたという。この考えは番組にVTRで出演した「小池一夫劇画村塾」出身の板垣恵介も実感しており、「構成、ストーリー、アイディア、キャラクター、画力といったパラメーターを均等に高めようとしていたが、そうではなかった。キャラクターが突き抜ければなんとかなってしまう」と語り、『グラップラー刃牙』に登場する範馬勇次郎や、ビスケット・オリバといった強烈なキャラにその教えが反映されていると紹介された。そのため、板垣は企画会議でストーリーの話はほとんどせず、キャラクターの打ち合わせしかしないという。

 さらに教壇に立った小池は、キャラクター作りのヒントとしてこんな実験を披露。小池がある指輪を取り出し、「この指輪は呪われた指輪で、1ヵ月つけると階段から落ちたり、いろいろなことがある。だけど1ヵ月無事にはめたら、すごいパワーを得る」とし、生徒にこの指輪を付けたい人は? と募る。そして、爆笑問題の二人が止めるのも聞かず、女性生徒が指輪をはめることに。そうすると、小池が「ほら、これで今まで名前も知らなかった女の子が、“不幸な指輪をつけてしまった女の子”というキャラクターになったでしょう」と種明かし。これには太田光も「やられた!」というような感じで、キャラクター作りの極意を学んだようだ。ほか、『子連れ狼』の拝一刀を例にとり、「キャラクターに弱点を作ると自然とドラマが生まれる」といったコツも解説された。

 また、爆笑問題との対談の中で『子連れ狼』の拝一刀が最後に死んでしまう場面について、関係各所から「勝手殺されると困る」「もう、小池さんだけのものではありません。TV界のものでも出版界のものでもある」「殺す前に相談しろ」と怒られたという裏話も語られた。

 番組では「小池一夫劇画村塾」の修了式の映像も流され、そこには若いころの原哲夫や当時はマンガ原作者志望だったという『ドラゴンクエスト』シリーズで知られるゲームデザイナーの堀井雄二の姿が見られた。ほかにも小池が「一度(高橋)留美子の原稿を破ったことがある」と語るなど、わずか25分の番組ながら、彼の原作に対するこだわりだけでなく、マンガ界はもちろんのこと、社会に及ぼした影響の大きさを改めて実感する放送となった。

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