『ただ離婚してないだけ』(本田優貴)タイトルからの予想を裏切るまさかのサスペンススリラー!狂気が狂気を呼び、罪が罪を重ねる!

 前回『あなたがしてくれなくても』をレビューしたが、今回はタイトルだけ見ると作風が近しいと想像できる、本田優貴の『ただ離婚してないだけ』(白泉社)を紹介しよう。

 前回もテーマはセックスレスがだったが、今作においてもそれはある意味、重要なテーマとなっている。結婚し、永遠の愛を誓い合ったとはいえ人間である。何年も一緒に暮らしていくと様々な心境な変化が生まれるものだ。恋愛というものは不安定なものであるし、ある意味それは仕方ないといえるものだが、この『ただ離婚してないだけ』は恋愛マンガではない。なんと、絶対的恐怖を孕んだサスペンススリラーなのだ。

 以下、簡単なあらすじだ。

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 主人公の正隆は、ひょんなことから若い新聞配達員の萌と不倫関係に陥る。正隆とその嫁の雪映の関係は冷え切っていたために、つい魔が差した行動であった。しかし萌の妊娠発覚を契機に、雪映にも不貞行為がバレてしまう。正隆は萌に別れを切りだし、雪映とやり直しを誓う。

 それから正隆と雪映の関係は改善され、子供を授かるまでに至った。しかし一方で振られた萌は精神的に病んでいた。ある日、雪映が妊娠していると知った萌は怒りと嫉妬で逆上し、刃物を持って正隆の家に押しかける。身の危険を感じたふたりは思わず萌を絞殺してしまうのだった……。
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 死体を隠す物語は過去にいくつか紹介した。例えば、筒井いつきの『少女支配』や内海八重の『骨が腐るまで』だ。『ただ離婚してないだけ』も死体隠蔽という点では、上記二作と同じ系統と言える。ただ、今作は主人公が大人で既婚者ということを軸に独特な展開を見せる。

 正隆と雪映が死体を隠蔽するのは、生まれてくる子供のためだ。自分たちの保身のためではない。特に雪映の意志は非常に強く、冷酷とまで感じられるほどに彼女の行動は徹底している。そのため、さらなる罪を重ねていってしまう。

 例えば、失踪した萌を探していたチンピラ男を撃退て家で監禁したり、萌の腐敗臭が漏れ出さないように夫に指示したり(死体は裏庭に続く通路に、夫に埋めさせた)、やることがかなりのヤクザである。もちろん夫の協力なくしてはできないのであるが、悪魔のような司令塔役をきっちりこなすのだ。

 しかし、全てが突発的に起きて、突発的に対処していくがために、万事が100%こなせているわけではない。徐々にほころびが出てしまうものだ。いつ彼女たちの行為がバレてしまうのか、どこまで罪に罪を重ねてしまうのか、と読むほうはいちいちヒヤヒヤさせられる。生まれてくる子供のためという大義名分があるからか、犯罪行為を見せられても彼女たちが穏やかに暮らせることをついつい望んでしまう。

 表面上は幸せそうなごく平凡な夫婦だが、とはいえその裏で行われている鬼畜な行為に彼女の狂気を感じざるをえない。いや、本当のところ嫁はもう狂ってしまっているのかもしれない。しかし、そもそも彼女は何ひとつ悪くない。全てはバカな夫の自業自得、身から出たサビのせいだ。今後、全ての悪事がばれようとも彼女だけは何かの救いがあることを望まざるをえない。まだ未読な方は、ぜひとも一緒に彼女たちの結末を見届けよう。
(文=Leoneko)

ただ離婚してないだけ 1

ただ離婚してないだけ 1

ある意味タイトル詐欺!

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