『あなたがしてくれなくても』不倫は絶対悪なのか?既婚男女のヒューマン恋愛ドラマに共感者続出

2019.04.09

あなたがしてくれなくても/ハルノ晴

 最近、夫婦間の“セックスレス”が話題となることが増えた。とあるWEBアンケートによると、その割合が30代夫婦で50%、40代ともなると60%を超えるという。

 なぜそこに陥るかはさておき、社会的流れから“セックスレス”をテーマにするマンガも増える傾向にある。例えばポレポレ美の『今日も拒まれてます〜セックスレス・ハラスメント 嫁日記〜』や、とがめの『実は私セックスレスで悩んでました』、渡辺ペコの『1122』などだ。他にも多数出版されているが、多くは女性目線で描かれている。

 そんな“セックスレス”をテーマにし、しかも男性と女性の両目線から描いた作品がいま非常に人気を博している。ハルノ晴の『あなたがしてくれなくても』だ。現在3巻までリリースされている。

 内容を簡単に説明すると、家庭内でセックスレスの男女が出会い、お互いの苦しみと悩みを打ち明けるうちに、互いに惹かれあい不倫に堕ちていく…といったものだ。

 不倫というと一般的には絶対的な悪のように感じられる。本作においても、主人公たちは既婚者ゆえの心理的葛藤が描かれるものの、純粋な恋愛劇のようにも描かれる。これはいけないことだ、という建前はあるものの読んでいるとつい共感し、恋の行く末を見届けたくなってしまう。

 それにはもちろん作者が夫婦間に起こりうる現実的な問題をリアルに描いていることが大きいが、恋愛マンガにおける基本的な甘酸っぱさや高揚感、そして危機感を刺激する描写が巧みに組み込まれているからであろう。例えば、メインヒロインである主人公・吉野みちの会社の後輩である北原華の存在だ。

 彼女は天真爛漫であり、自分の若さとかわいさを武器にできる女として描かれる。恋愛至上主義の一面があり、男漁りに余念がない。そんな彼女も、吉野みちの不倫相手であり本作のもうひとりの主人公・新名誠に心を惹かれている女性だ。つまり三角関係なのである。

 吉野みちとその夫、新名誠とその嫁、この関係があるだけで主人公ふたりは最初から入り組んだ三角関係といえる。それなに北原華の存在まで絡んでくるのだから、関係性だけでいうとかなりややこしいことになっている。

 現時点のストーリーでは、三角関係のせいで人間関係がぐちゃぐちゃになるような展開になってはいない。というのもまだ主人公ふたりは肉体的な関係にまで発展せず、プラトニックでいられたからだ。しかし、三巻のラストでついに一線を越えることをにおわすシーンで終わる(これまで主人公ふたりに肉体関係はなかった)。そしてこれまでは互いの関係が周囲にばれずにいた日々が、四巻の予告でついに乱れることを予想させる。

 恋愛で人間関係が崩れると、想像以上に肉体的にも精神的負担が大きくなる。この危機をふたりはどう乗り越えるのか。互いの家庭はどうなるのか。社会問題、不倫、恋愛と様々なテーマを持った本作をまだ読んでいない方はぜひ手に取ってみよう。
(文=Leoneko)

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