華山みおの物語探索その26

『青野くんに触りたいから死にたい』(椎名うみ)圧倒的な描写が恋愛的な切なさと恐怖を呼び起こす…読者の心をつかむホラーラブストリー!

 『青野くんに触りたいから死にたい』――。

 もの凄いインパクトのタイトルです。今回は、椎名うみ先生の漫画『青野くんに触りたいから死にたい』をレビューします。

 以下、あらすじです。

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 刈谷優里、高校2年生。彼氏は幽霊の青野くん。

 この恋は、絶対に結ばれることはない。

 しかも、彼はときおり態度が豹変し、優里に憑依してくることがある……。

 君はモンスターなの? それでもいい、君と一緒にいたい。

 わたしはどうなってもいい。ほかには何もいらないから――。

 この恋は純愛か、狂信か。

 幽霊の彼×女子高生、異色のホラーラブストーリー!
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 1巻から既刊4巻までを一気読みして思ったのは、言語化できないもどかしさです。もうこれ、どんな感情になればいいんでしょう。

 ただのホラーではなく、ただのラブストーリーでもありません。当然タイトルのインパクトだけで終わる漫画でもなくて、読めば読むほど目が離せなくなります。まさに、心がつかまれた物語でした。

 この漫画で私が一番すごいと思ったのは、描写です。

 椎名うみ先生が描く、キャラクターの感情、学校や対人関係の雰囲気、ホラー部分の薄気味悪さ、恋愛のドキドキ感が、コマ割り・台詞・キャラの表情・背景とともに、洪水のように押しよせてくるのです。

 例えば1巻の「わたしの匂いだ!!」の文字。生きているときにできなかった青野くんとのハグが叶ったその瞬間に感じた自分の匂いと枕の感触。一体どういったシーンなのか、言葉で説明すると野暮でしかないので、今すぐ読んでほしい最高のシーンです。言葉にできない切なさが、あなたの心を襲うことでしょう。

 幽霊と人間なんて、どうしたって上手くいく未来が見えません。それに、「青野くんの死」という事実は動かせません。恋人として触れ合うこともできないし、悲観するしかない出来事が次々と襲いかかってきます。恋人たちが普通にできる“一緒に居続ける”がしたくても、絶対にできないのです。

 どうすることもできない。でもどうにかしたい。このジレンマ……。

 だけど、ふたりがイチャイチャするシーンはそんなことを忘れてしまうくらい恋愛漫画してくれます。青野くんには触れないけれど、とっても素敵なキスシーンや抱きしめあうシーンがあるんです。つき合いたてのふたりがするような、ちょっとエッチな会話なんかかもあるんです。少女漫画の世界に来たかな、と思うくらい胸がキュンキュンします。 

「青野くんのそばにいられるなら他には何もいらない」と言い切る優里ちゃんは純真だけど思い込みが強すぎて、危険な香りもします。そんな優里ちゃんのふり幅の大きさや、揺るがない青野くんへの想いが今後物語をどう動かしていくのでしょうか。

 4巻までの間に語られていない青野くんの家庭の事情や、時折現れる非現実世界の部屋と不気味な長髪の女(母親?)など、ホラー部分にも謎や伏線が張り巡らされていて、気になることが多いです。

 一方、生きている人間(特に優里ちゃんのお姉ちゃん)にもホラー部分があります。この描写もかなりリアリティがあって怖いんです。優里ちゃんが、これから彼らとどう対峙していくかにも注目です。

 彼らの恋愛がどんな決着を迎えるのか、今後も目が離せません。5巻の発売がとっても楽しみです!! 早く続きが読みたいーーー!

崖際のワルツ 椎名うみ作品集

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