華山みおの物語探索 特別編その2

『ブラック・ジャック』(手塚治虫)未完の大傑作を改め読んで知る“医療”とは、生きるとは、人間とは?

 ドラマなどで目につく医療系の物語の多くは、患者に襲い来る病よりも、学閥みたいな病院内の人間関係のドロドロを描くことに焦点を当てているものが多かったり、昨今のニュースではお医者さんになるという夢を踏みにじるような、男女差別があったり……。

 病気そのものに焦点を当てているものが少なく、病気よりも人間が恐ろしいという気持ちになることも多く感じます。もちろん、私欲をこらしたり、適当な診察しかしないお医者さんばかりじゃないことも分かっているけど、どんどんお医者さんを信じる気持ちは希薄になっています。

 『ブラック・ジャック』は基本的には1話完結です。誰かが怪我・もしくは病気になり、ブラック・ジャックの元に訪れます。

 作中の手術シーンは、フィクションだから可能なもの(もちろん現実に起こり得る病気のものも多数ありますが)も多いです。ピノコ誕生のお話しは特に、フィクションだから生まれた手術(畸形嚢腫の手術自体は本当にあるそうですが、そこからピノコを産み出す手術について)ですよね。

 それとは逆に『海賊の手』というお話しは、スポーツ万能で、体操選手を志していた少年が病気により左手が義手となり、夢を断念させられ、そこから義手でも打つことができる将棋に出会い立ち直っていく話なのですが、こちらは現代の医療ならば十分可能なのではと感じました。

 患者が悲観にくれ、道を踏み外してしまうかもしれない。そうならないように手助けする。新しい希望を与えてあげられるって、すごいことです。

 体の一部に大きな傷を負ったり、死に瀕して寝たきりになったり。そういったことを救えるのはやはりお医者さんしかいないのです。

 ブラック・ジャックは法外な値段を要求するけれど、(相手によりますが)搾り取ったりだまし取ったりはしないし、彼の信念がちゃんとあります。そういった部分を読み取るべき描写や考えさせる話が多く、この作品に触れたことで医療の道を志す人も多かったのではないでしょうか。

 また作品には、病気について知る、興味を持つ、対策をする、医者を信じる、医療に希望を持つ、など患者側にも必要なことが示されています。

 医療は、誰もが人生の中で関わらないわけにはいかない身近なもの。読者の想像力、共感力、読み解く力、考える力が必要な作品ですが、本来物語とはそういうものですよね。感性を養うために必要な刺激を提示してくれる、きっかけをくれる素晴らしい物語です。

 私も怖がってばかりいないで、もうちょっと病院に対して歩みよりたいと思います。とりあえず逃げ回っている歯医者から……。
(文=華山みお)

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ブラック・ジャック 1
掲載誌/レーベル:手塚治虫文庫全集
著者:手塚治虫
出版社:講談社

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