『元カレが腐男子になっておりまして。』同ジャンルのオタに会えるだけでも奇跡なのに、それが元カレってどんな奇跡なの!? オタなら共感しまくり腐男女オタコメディ！

　元カレ・元カノとバッタリ会ったこと、ありますか？　数少ないながらもとりあえずいる元カレと、街中バッタリしたことはあれど、腐男子になった元カレは、多分いない……かな？　え、君たち実は隠してる？　もし腐ってたら教えて！　ジャンルとカップリング！！

　そんなわけで今回は麦芋さんの漫画『元カレが腐男子になっておりまして。』をレビューします。あらすじはこちら。

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　ある日、書店に立ち寄った赤土桃は、そこでBL同人誌を物色する腐男子と出会った。

　初の腐男子との遭遇にテンションのあがる桃だったが、 よく見るとその腐男子は自分の元カレの片倉錫也で!?

　まっすぐ誠実にオタク道をひた歩く、 元カレ元カノな腐男女オタコメディー！
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　オタクコメディーに分類される漫画ってなんでこんな面白いんだろう。あるあるがわかりすぎるからなのか。これ例えばオタじゃない人が読んでも面白いのかな？　ちなみに私は根っからの腐女子というわけではないのですが、そちらのジャンルも美味しくいただける系のオタクです。

　一口に“オタク”と言っても、オタクの世界は海よりも広く深く、さながら宇宙のように広大です。そんな中で同じ嗜好を持つ同士が身近にいるということは奇跡と呼んでも過言ではありません。
　
　ジャンルが国だとしたらその国は無数にあり、言語も違い、発展の仕方もジャンルによってまちまち。その国独自の法律があったり、その国の中でも王道や異端も幅広く分かれ、国同士の戦争や内紛だってある。

　だから主人公の桃が、同じ社内で同じジャンルで同人活動を共に出来、鼓舞しあえる仲である幸音という友達がいるのが超羨ましい。もう、この作品で幸音という存在が本当に尊い。

　そんな最高の友、幸音だけでなく主人公の元に現れる元カレ、錫也。彼も同ジャンルの腐男子。腐男子になったきっかけは桃が手違いで見せてしまったBL本がきっかけで、さらにそのジャンル嗜好がそのまま根付いて自分の描く作品にめちゃめちゃはまるという、花丸満点な成長を遂げて現れてくれるの最高じゃないか。

　上にも書いたけど、本当に同じジャンルにはまれるなんてそうそうないんだよ……！　しかも推しカプも被って自分の作品が好き＝嗜好が大体一緒。もうこれ最高に話あうやつじゃーーーーーん！　

　付き合ってる当初は隠していたオタクというものもオープンになり、気も合う、話も合う。別れた当時の気まずさも薄れてお互いの好感度も上がればもういうことないじゃないか……。とにかくこの錫也くんかわいい。　素直だし、好きなものを前にしたときの語彙力のなさもかわいいし、大手商社勤務だし、イケメンだし。ちょっと、この物件を逃す手はないんじゃないの、桃！

　主役ふたりの恋愛模様はもちろん、この作品の見どころは同人活動だけではなく、オタク的に大好きなものがある人、それを表現したり、何かを生み出したりしたことがある人への共感が溢れる部分もあると思います。

「誰かを私の性癖で殴れたんだって思うとゾクゾクする」という幸音の台詞、超わかる。私は同人活動は行っていませんが、こうやって文字を書くことや声で何かを届けることをしていると、そこに対してのリアクションを貰った際に同じような気持ちになることがあります。

　桃が錫也に同人誌の感想を貰ったような出来事、経験ありませんか？　自分が好きなものを好きって同意してもらって、自分が作ったものに感想をもらえる。最高に幸せですよね。

　原作へのリスペクトをもち、自身の二次創作を楽しんでいる桃と幸音の同人あるあるみたいな描写も、とてもリアルで面白いです。
　
　主役ふたりの元鞘展開や、腐男子ならではの悩み、オタ事情、そして私の推し幸音とシルヴィオの関係の発展は？！　などなどこれからの展開も気になります！
（文=華山みお）

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『元カレが腐男子になっておりまして。 1巻』
掲載誌／レーベル：ガンガンコミックスpixiv
著者：麦芋
出版社：スクウェア・エニックス