『異常者の愛』ストーカー、サディズム、愛憎、そして復讐……絵とのギャップが激しすぎるサスペンスホラー!

2018.07.16

『異常者の愛』第5巻/千田大輔

 ストーカー行為等の規制等に関する法律、通称ストーカー規制法が施行されて18年が経っているが、ストーカー事件は後を絶たない。

 法律制定のきっかけとなった桶川ストーカー殺人事件をはじめ、逗子ストーカー殺人事件、三鷹ストーカー殺人事件、そして小金井ストーカー殺人未遂事件など、ストーカー事件には凄惨なものが多い。最近では、大きな事件に発展しなかったが、タレントの菊池桃子氏への度重なるストーカー行為で無職の男が逮捕されたことが世間の注目を浴びた。

 ストーカー事件の根底にあるのは、ねじれた愛情だ。菊池桃子氏の事件で逮捕された男は、今年3月にストーカー行為で現行犯逮捕され、4月に罰金の略式命令を受けていた。警察の話によると、釈放時につきまといの禁止命令が出され、男は「二度と近づきません」と話したという。それなのに、また命令を無視して逮捕されたのである。

 さてそんなストーカーだが、ねじれた愛情が狂気にまで発展したホラーサスペンスマンガを紹介しよう。その名もずばり『異常者の愛』だ。現在までに5巻がリリースされている。

 以下があらすじだ。

 一之瀬一弥を異常なまでに愛し、付きまとう三堂三姫。周囲に対する嫉妬心も常軌を逸していた。

 
 三堂は小学生の時に二海二美香をカッターナイフで惨殺し、保護施設に送られる。高校生となった三堂は再び一之瀬の前に現れ、交際相手の四谷四乃に拷問をする。

 その後、消息をくらますが、22歳になった一之瀬の前に付三度表れ、異常な愛をふりまき、一之瀬に取り繕うとする女には残酷なまでのサディズムで拷問し、恐怖を植え込んでいくのであった……。


 三堂三姫の異常さは、スティーヴン・キングの名作『ミザリー』に近い。望月峯太郎氏の『座敷女』にも近いが、同作ほど怪奇じみた存在ではなく、あくまで一之瀬一弥に異常に執着する一人の女性として描かれる。

 話の大きな流れとしては2つある。一つは三堂の一之瀬に対する異常な性愛と、その愛を貫くために彼の周囲の女性に向ける狂気じみた拷問描写。分かりやすく言うとホラーな部分だ。そしてもう一つは、三堂の異常さに翻弄され、人間としての尊厳を失うまでに至った一之瀬と周囲の人間たちが、彼女に対する復讐劇のサスペンス要素だ。

 それにしても三堂の異常なまでのサディズムは目を覆いたくなる。殺人を目的としていない拷問であるがゆえに、かえって苦痛を覚える。カッターナイフで皮膚を切りさくなど、致命傷を与えない傷を植え込んでいく。日常生活にあふれたものが凶器に使われているという点も、不快さに拍車をかける。

 ただし、難点もなくはない。千田大輔氏の画が萌え絵なので、内容が内容であってもフィクション感が強く感じられてしまい、恐怖さがいくらかマイルドになってしまう。また、物語の分岐点で語られる種明かしが、キャラが独白していくという構造に、少々ご都合主義を感じてしまう。しかし絵に関しては、最初は違和感を覚えても、読み進めていけばいつの間にか絵と内容のギャップが、この物語の異常さを助長してくるから不思議だ。

 いずれにせよ、ホラーサスペンスのマンガとしてかなり楽しめるのはまちがいない。物語の決着がどうなるのか、今後も見守りたい。
(文=Leoneko)

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異常者の愛 1
雑誌/レーベル:マンガボックス
筆者:千田大輔
出版社:講談社

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