【同人活動レポート】

「18禁」の定義って? 夜は寝床でフウフウフウ、R-18同人誌を頒布する!

■朝チュンはR-18でない理由が堂々と説明できる!

 ここまでで、「朝チュン」はR-18ではないことが堂々と胸を張って説明できるはずだ。言うまでもないが「朝チュン」とは、女性向け漫画で使われがちな表現方法であり、夜、男と女が寝室になだれ込み、ベッドの上で固く握り合った二人の手や皺のよったシーツだけの描写があり、ページをめくると、もう東の空は明るくなっており、スズメがさえずっているというアレだ。よって、男と女は、ベッドの上で一晩中腕相撲に勤しんでいたのかもしれないのだ。

 ターちゃんと獠さんの男性器をほぼ毎週「ジャンプ」で見て育っていたが、一方私は小学~高校のころ購入していた少女漫画雑誌は「りぼん」→「別冊マーガレット(別マ)」という、「集英社・清純派コース」だった。今の別マはハードコアなのかもしれないが、20世紀の別マは最終回の一回前でヒロインがようやくキスする程度で、いくえみ稜先生が女性の登場人物が浮気する漫画を描いた際は「いくえみ先生、攻めすぎ~!」と思ったくらいだ。

 しかし少女漫画誌でも、『快感(ハートマーク)フレーズ』を擁した小学館「Sho-Comi(私が読んでいたころの名称は少女コミック)」は結構エロ描写も攻めていて、姉のいる友達の家で篠原千絵先生の色っぽい漫画をワクワクしながら読んだものだ。「Sho-Comi」では「朝チュン」や「口にキスした次に首筋にキスする」くらいまで描かれていたものもあり、女子小学生の私は「くゥ~!」となっていたものだ。

「首筋にキス」→「朝チュン」の間の、通勤快速で飛ばしてしまった「→」こそがR-18の天守閣だ。埼京線で例えるなら、赤羽と武蔵浦和の間の戸田あたりが超絶エロであり、ここをバシッと描いているのがコンビニの成人指定漫画雑誌といえる。

 しかしエロの空気は水物で移ろいやすい。「朝チュンとはおぞましい。こんんなものは有害図書だ、一体どんな心の闇が朝チュンなんぞを描かせるのか、親の顔が見てみたい」という時代が来ないとも限らないのだ。

■結局私の同人誌はこうなった

 R-18について、上記の通り調べてきた。

「必要以上に及び腰にもならず、でも、同人文化の末端とはいえ当事者である以上、この愛すべき文化の妨げにならないよう忖度の上、エロ同人誌を作ろう」と青雲の志を抱きいざ鎌倉、とエロを書こうと思っていたのに、書いてみたらヤらずに終わった。「朝チュン」すら至らなかった。堂々と、胸を張って「非R-18」です! といえる仕上がりになった。

 ネット記事にありがちなタイトル詐欺かとご立腹の方にはおわび申し上げたいが、タイトルは「R-18同人誌を頒布する」で、「頒布した」ではないと言い訳したい。正しくは、「R-18同人誌を頒布する(つもりでいたけど、R-18じゃなくなった)!」だ。

 やはり「りぼん→別冊マーガレット」の清純派育ち。三つ子の魂百までだ。書かない方がかえってエロい、という戦略的撤退であったことも加えておきたい。

■妄想よりも、オフ同人誌にした方がいい理由

 最後に、5月に同人誌即売会イベントに出たので、毎回報告している同人誌頒布状況について報告したい(前回報告)。

【状況】
・2015年より同人誌A~Fを制作。全て二次創作の小説。「A」「B~D」「E,F」は原作が異なる
・ソロ活動(「同担」との交流はほぼない)
・オンラインはPixivのみ利用(個人サイトなし。TwitterもROMのみで利用)
・同人イベントは年に2回のペースで参加。イベント後通販も行う。
・A~Cは50部、Dは40部、E,Fは30部刷る(印刷所がくれる余部は含めない)

【前回、2018年2月の頒布冊数(同人誌A~Eまで)】
A 19冊
B 50冊(完売)
C 40冊
D 24冊
E 18冊
合計 151冊/220冊

【2018年5月の頒布冊数(同人誌A~Fまで)。イベント+通販分】
A 21冊(+2)
B 50冊(完売)
C 44冊(+4)
D 27冊(+3)
E 24冊(+6)
F 21冊(+21)
合計 186冊/250冊

 今回のR-18になり損ねた新刊Fは、今まで書いたどの同人誌よりも長期間妄想していた。毎晩妄想し、かなり妄想だけで仕上がっており、これなら数日でスラスラ書けるのではと思ったほどだ。

 しかし、実際書きだすといつも通り時間がかかった。妄想だと1→2→3→4→5となっていたはずの内容が、いざ書いてみると1→95→897くらいまで飛躍しているのだ。DVDで「次のチャプター」を3回押したくらい話が飛んでしまっている。「あれれ~、妄想のときはすごく完成されていたはずなのに、おかしいな~」と江戸川コナン君の口調になるのも「書いた時あるある」だ。

 これは、映画の予告編を見ると、どれも超絶名画に見えてしまうのと一緒だ。断片断片を出されると、勝手に脳内からゲル状の「すてき物質」が分泌され、断片の間を埋めてなんかいい感じに仕上げてくれるのだとしか思えない。しかし、妄想から実際形にしようとすると、「すてき物質」不在の戦いを強いられる。「えっ、あれもこれも自前で用意しないといけなかったのか!」と気づかされるのが、妄想を形にする苦しさであり楽しさでもある。

 もともと全ての同人作家が妄想出身であるはずだし、今も私にとって妄想は実家のような気楽な心のふるさとであることには変わりない。しかし今回、「長時間妄想しようがしまいが、同人誌を作る際は同じくらい時間がかかる」事実に愕然とし、妄想はほどほどにしようと思った次第だ。

 妄想は楽しいが、脳内の「すてき物質」不在で戦い抜いた成果である新刊は誇らしく愛しい。イベント当日、自スペースで印刷されたての新刊を「どれどれ」と開くときの充足感は、他の人生の局面ではなかなか得られないものだ。 今はオンラインで作品を発表する環境も充実しているが、やはりイベントで紙の同人誌を出すことが好きだと、出るたびにあらためて思う。

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

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