アメリカでは勝訴したが……『ウルトラマン』の泥沼著作権を生み出した円谷プロの光と影

 恩義を忘れた円谷プロは非道すぎるのではないか。これまで国内外で繰り返されてきた『ウルトラマン』シリーズの日本国外での利用を許諾したとされる契約書の真偽を巡る訴訟。米カリフォルニア州の連邦地裁が「契約書は真正なものではない」と円谷プロ全面勝訴の判決を下したのだ。

 この円谷プロの契約をめぐる訴訟は複雑だ。これはタイにあったチャイヨー・プロダクションが1995年に死去した3代目社長・円谷皐から、チャイヨーが円谷に援助した資金を返済する代わりに『ウルトラマン』などの日本以外の独占権を譲渡され、その際契約を結んだと主張。これに対して、円谷プロが「契約書は偽造」と真っ向から争っているものである。

 この訴訟、タイでは2008年に円谷プロ全面勝訴の判決が下ったが、一方、日本では12年に最高裁が「契約は有効」と判断。

 ただし、この時点でチャイヨーが1998年にバンダイから1億円を受け取り、タイ以外の独占使用権の行使を放棄していたことも判明。現在、チャイヨーから権利譲渡を受けたとする日本企業・ユーエム社も円谷プロと争ってるが、ユーエム社には権利は存在しないとの司法判断になっている。

 一方、中国では2005年にチャイヨー側が、キャラクター商品の販売停止を求めて円谷プロを提訴。これは円谷プロ側の勝訴に終わった。ところが円谷プロがユーエム社に対して起こしたキャラクター商品の販売停止を求める裁判では、ユーエム社が勝訴。この結果、17年には中国で『ウルトラマン』に酷似したキャラクターが登場する『鋼鐵飛龍之再見奧特曼』が制作され、さらに複雑な状況となっている。

 利害関係が複雑極まりない、この問題。一面的に見れば「他人のふんどし」で儲けようとするチャイヨー側が悪とする見方もできる。でも、問題はそう単純ではない。

「チャイヨーを創業したソムポート・セーンドゥアンチャーイは、日本で円谷英二に師事し、特撮を学び自ら『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』を制作するなど、円谷リスペクトを欠かさない人物です。円谷皐とも関係が深く、円谷プロが資金繰りに窮した際には援助を惜しみませんでした。その援助の代わりにウルトラマンを託されたのだと見たほうがよいでしょう」(特撮ファン)

 実のところ特撮ファンの間では、単純に善悪は判断できないにしても「円谷プロはひどい」と考える者も多い。その理由は、ウルトラマンの誕生をめぐる問題だ。

「ウルトラマンはもとより侵略宇宙人の独特のデザインは、彫刻家の故・成田亨によって生まれたものであることがわかっています。ところが、成田が当時円谷の契約社員であったことから、権利はないどころか、当初約束していた出版物などのデザイン・成田亨とのクレジット表記も、約束すらないことにされていたりしたんです。少しでも特撮の世界を知れば円谷プロの光と影に複雑な気持ちになるでしょう」(同)

 今回、アメリカでの訴訟に喜びのコメントを発表した円谷プロだが、過去に受けた恩義や制作者の功績を、今後どのように考えていくのだろうか。
(文=是枝了以)

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