『僕たちは元気です』(摺澤翔)これぞゾンビというオールドスクール・ゾンビホラー!グロは控えめ苦手な人でも大丈夫!!

2018.05.16

『僕たちは元気です』第1巻/摺澤翔

 先日『狂鳴街』という新世代ゾンビマンガのレビューをしたばかりだが、ここにも新たなゾンビマンガが誕生した。摺澤翔の『僕たちは元気です』だ。

 『僕たちは元気です』は一見、『アイアムアヒーロー』のようなゾンビマンガとは思えないタイトルであるが、内容は実にオールドスクールなゾンビホラーとなっている。とはいってもジョージ・A・ロメロのゾンビのように絶対に走らないというわけではないのだが。

 まずは公式の紹介文を引用しよう。

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 とある病院で、死んだ患者が蘇った。その患者は、復活と引き換えに人を喰らう怪物となる。“肉喰い”と呼ばれる怪物は感染によって急増し、わずか2週間で日本は地獄と化した…。富岡裕貴、そして唯。「母に会う」ため、兄と妹は旅立った。変わり果てた世界との戦いの日々。それでも二人は、今日も明るく前進するのみ!
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 『僕たちは元気です』におけるゾンビの呼称は“肉喰い”である。ストレートな表現なので、だったらゾンビでいいじゃないか、とも思うのだが、純粋なゾンビのように死体が蘇るわけではないので、ゾンビとも100%イコールにはならない。そんな細かいことはさておき、この作品においてもゾンビ(“肉喰い”)になるのは、最近のゾンビものの主流である何かしらの得体のしれない細菌への感染である。『アイアムアヒーロー』でもそうだったし、『ウォーキング・デッド』や『新感染』などもそうだった。

 では何がオールドスクールなのか。ゾンビがあまり賢くなく、走る個体はいるものの、基本的に動作が遅いという点だ。そのため、冷静に行動すればゾンビから身を守ることはさほど難しくない。

 また、何かしらの理由でゾンビ感染が爆発的に広がり、長野から東京へ両親に会いに行くと、物語がストーレートすぎる。行く先々で良い人かと思いきや騙されたり、安全な場所だと思ったら危険な場所だったり、定番の連続で、正直目新しさはない。しかし、その一方で安定した面白さとドキドキ展開が繰り広げられるとも言えなくない。そういった意味で、『僕たちは元気です』はやはりオールドスクールな作品と言えよう。

 さてこれを念頭に置き、では『僕たちは元気です』の特徴は何かと問われたら、それはキャラクターの底抜けの明るさだろう。主人公は兄妹のふたり。兄・富岡裕貴はクールで知的な一面を光らせる“いかにも”主人公キャラであるが、妹の唯はとにかく明るくひょうきんで、元気印のような娘だ。ザ・妹キャラといえばいいだろうか。明るすぎて社会性に富んでいるぶん、危険な目にあったりしてしまうのが。

 安定した面白さと、ゾンビものってこうだよね、という期待通りのステレオタイプさはあるものの、このままいくと普通すぎて尻切れトンボで終わってしまう可能性もある。第2巻で巻き返しをしてくれるのか。期待だ。
(文=Leoneko)

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僕たちは元気です 1
掲載誌/レーベル:マガジンポケット
筆者:摺澤翔
出版社:講談社

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