――「人身御供」も「月読」に負けないくらいパワーがあり、メロディックな楽曲になっていますね。
橘花:「人身御供」は夜摩が書いたのですが、ギターの本数を多く重ねているんですよ。メインリフやツインギターソロ等かっこいいフレーズが満載です(笑) 展開もドラマティックなので、ぜひ繰り返し何度も味わってほしいですね。
百合:この曲は、村の掟で10歳の少女が生贄になってしまうお話なんですよ。デモの段階で短編小説が書けるくらいのストーリーがあって、驚きました(笑)
10歳まで家族の愛と、大自然に囲まれ何不自由なく育ってきた純真無垢な少女が、ある日突然生贄にされるという事実を知るんです。神に祈ろうともその神に自分を捧げなければならないので、誰にも助けを乞うことのできない悲しい定め。けれど少女は最期の最期ですべてを受け入れて、無垢な心のまま定めに従うという結末です。
歌詞を作りながらなんでこんな良い子が10歳までしか生きられないんだ! 誰だこんなお話作った人は! と嘆きましたね。
――「橋姫」はストレートでハードな演奏が繰り広げられる上に、メロディックなボーカルが乗るという独創的な曲ですね。
橘花:「橋姫」は夜摩が持ってきたリフのアイデアをもとに、メンバー全員でアレンジした曲で、Rakshasaの総力をつぎ込んだ曲ですね。
百合:歌詞は平家物語の『宇治の橋姫』からヒントを得ています。後の丑の刻参りの原型とも言われている物語だし、神様が鬼のなり方を教えるという恐ろしい話です。
恋と嫉妬は世の常だし、誰しもが鬼になる要素を持っているのかもしれません。「ああ怖い……」と思いながら歌詞を書きました。
歌としては、イントロ、アウトロのクワイヤに深く耳を傾けてほしいですね。当初は入れる予定はなかったのですが、レコーディング数日前に思いついて、メンバーの反応も聞かずに入れてしまったのです。結果的には好評だったので良かった。クワイヤだけで百合が16人もいるんです(笑)
――橘花さんから「メンバー全員でアレンジした」という言葉がありましたが、キーボーディストの崇さんが編曲でかなり活躍されたとか。
崇:そうですね。今回のEPでかなり手を加えたという意味では、「橋姫」が一番で、その次が「人身御供」ですかね。
――編曲するにあたり、意識していることはありますか。
崇:これは全ての曲に言えるのですが、作曲者のイメージや、歌詞の世界観からずれないように意識しています。自分なりの解釈で音色を決めたり、音を足したりする部分も多いですけどね。
「橋姫」は作曲の段階で参考になるものがなかったんですよ。自由すぎてかえって難しかったのですが、わずかなアイデアからなんとか膨らましていき、作り込むことができました。
今回のEPの編曲においては、隠しフレーズ的な要素をたくさん散りばめています。「橋姫」の尺八なんかはまさに隠し要素なので、ぜひとも聴きこんでもらいたいです。
――最後を飾る「破船」はパワーバラードとなっていますね。
橘花:この曲は吉村昭氏の同名の小説をモチーフにしているんです。なので、原作を知っていれば2倍楽しめます。サビは百合がソプラノ気味に歌い上げているのですが、「キーが高すぎる」とレコーディング中にクレームが来てしまいました(笑)
百合:橘花から実際に小説を借りて歌詞制作に入ったのですが、小説の結末が誰も救われない様な内容で、読んでからしばらく立ち直れなかったですね。でもそのおかげで小説を読み進めるような歌詞にすることができたと思います。小説「破船」も読んでいただけたら、歌詞に出て来る言葉の本当の意味により深みが出ると思います。
――ではいまこのタイミングで1stアルバム『六道羅刹』を振り返ってみると、いかがでしょうか。
夜摩:1年前のあの当時、我々ができること全てを注ぎ込んだ作品でだったよ。聴いていて、我ながら良いと思う。
しかし、時間が経つにつれ、あそこはこうすれば良かった、こうすれば良かったって思うところが出てこなくもない。もっと時間をかけられたのなら、さらに良い作品になったかもしれない。とはいえ、それらを差し引いても出来には大満足さ。
百合:出来には満足していますよ。でもスケジュールがパッツパツだったので、もう少し時間があれば心理的余裕ができたかなって思うこともあります(笑) 『憂愁録』もそうだったんですが、時間との勝負みたいないところがありましたから。
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